本の感想「機械仕掛けの太陽」知念実希人

機械仕掛けの太陽」知念実希人文芸春秋

 感染症の対応が2類から5類へ変わったことでコロナとどう向き合うかが各人の判断にゆだねられる事柄が多くなりました。このタイミングでコロナの発生当時から今までの社会状況をおさらいしてみるのは価値があると思われます。この小説は主に医療従事者の立場からコロナとのせめぎ合いをドキュメント・ノベルとして書かれています。いまだにコロナについては分からないことが多く、専門家の見解にもばらつきがあります。そういう状況の中で私たち感染症の素人はどう行動していくべきなのか最適解を見つけることは困難です。そもそも「ファクターX」と言われた謎ーコロナ発生当初に日本では感染者数も死亡者数も比較的少なかったーにさえも明確な説明はなされていません。だからこういう小説を読んでなんらかの手がかりをそれぞれに模索していくしかないのだろうと思います。医療従事者の視点から書かれていることで通常の報道では得られにくかったような現場感も読み取れます。ストーリーは筋立てがはっきりしていて読み易いのでスイスイと読むことが出来ました。