本の感想「ヒロイン」桜木紫乃

本の感想「ヒロイン」桜木紫乃毎日新聞出版

 地下鉄サリン事件の指名手配犯だった女性をモデルにした物語。17年間の長い逃亡生活を描いている。主人公は事件の実行犯と当日一緒にいただけであり、犯行には関わっておらず、犯行計画も知らなかった。主人公は逃亡するというよりもできるだけ普通の暮らしをして目立たないようにしていた。17年間のをいくつかのステージに区切ることができるが、その都度、協力者がいたのは前述の事情が共有されていたということもあってのことだろう。

 主人公が教団との関りをもったきっかけは母親との確執に端を発する。母はバレーのインストラクターで娘の幼少期から熱心にバレーの指導をしていた。主人公はその厳しい指導に次第に耐えられなくなり、レッスンを続けることに限界を感じるようになった。それから逃れるためにこの宗教に入信して母から離れて行った。教団の施設で暮らすようになってからは外の社会との関わりを絶たれて限られたスペースの中での生活が続いた。無差別殺人の犯行当日、実行犯たちが現場に向かう準備をしていた時に、たまたま居合わせることになった主人公が車に同乗させられた。何も知らされないままに実行犯と行動を共にすることになった。指名手配になったものの、直ぐに捕まっていればおそらくは罪に問われなかっただろう。しかし、逃亡中にある犯罪の後始末に関わることになってしまった。

 17年間はとても長い。もしも早く捕まっていれば無罪放免というかむしろ被害者の一人だった筈の女性の半生をどのように受け止めればいいのだろう?