本の感想「北海道の貨物列車」原田伸一・伊丹恒

本の感想「北海道の貨物列車」原田伸一・伊丹恒(北海道新聞社)

 本のタイトル通りに、北海道の貨物列車についての網羅的な解説書である。トラック輸送に関して2024年問題がしばしばニュースになるようになったが、抜本的な解決法はいまだに模索中といったところだろう。悪い見通しでは輸送インフラの脆弱なエリアが生ずるのは防ぎようはないとされ、主要ルートでも速達性は確保できないとされる。解決法の一助になると言われるのがJR貨物の利用増強である。この本でもそのことは取り上げられている。新幹線が札幌開業になると函館ー長万部間は旅客輸送が廃止になる可能性があり、貨物輸送は継続されることが決まっているとは言え、具体的にどうやって鉄路を維持するのかについてはまだ決まっていない。もしも貨物輸送の需要しかなくなるとしたら、路線管理はJR貨物が全面負担することになるのかもしれない。それで採算がとれるとは考えにくい。さらに、30~40年ごとに有珠山の噴火活動による被害の対応も問題である。この前の噴火の際は長期間室蘭線が普通になり迂回路として長万部ー札幌の「山線」が使用された。しかし同区間は新幹線の開業後の廃線が決まっているので迂回路は存在しなくなる。どう考えても輸送コストの上昇は避けられそうもないのだが、鉄道貨物の利用を増やす仕組みを早く整えておくことは有効だろうと思う。

 読み物として楽しいのは貨物列車の同乗記。旅客列車で通っている路線でも貨物列車の機関車からは違った目線があるものだ。通常は体験できないことだけに興味深く読むことができた。