2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

本の感想「美しい世界をめぐる旅」吉村和敏

本の感想「美しい世界をめぐる旅」吉村和敏(フォトセレクトブックス) 吉村氏の最新の写真集で6月に出版された。今の時代、写真集はなかなか売れない。にもかかわらず、吉村氏は紙媒体である写真集の出版に力を入れている。あとがきに記してあるのだが、「…

7月の山行 利尻山

7月の山行 利尻山 7月20日の早朝3:30に出発しました。稚内からのフェリーの時刻が11:10なので6時間ぐらかかっても十分に間に合うはずです。深川から留萌までは高速が無料区間で、その先は一般道ですが交通量が少なく順調に進みました。天塩から北は時折対向…

本の感想「裸の大地第1部 狩りと漂泊」「裸の大地第2部 犬橇事始」角幡唯介

本の感想「裸の大地第1部 狩りと漂泊」「裸の大地第2部 犬橇事始」角幡唯介」集英社 極北の地、グリーンランドで橇を引き自分で地図を作る冒険記。著者の意図はかつて人が地図を持たなかった時代に未踏の地にどうやってルートを開拓していったのかを追体験し…

本の感想「夕暮れに夜明けの歌を」名倉有里

本の感想「夕暮れに夜明けの歌を」名倉有里(イーストプレス) 著者のロシア留学体験の回想記。2002年にペテルブルグの語学学校で学び、その後モスクワ大学予備科を経て、ロシア国立ゴーリキー文学大学を2008年に卒業した。とにかくひたすら勉強に打ち込んだ…

本の感想「理不尽ゲーム」サーシャ・フィリペンコ 

本の感想「理不尽ゲーム」サーシャ・フィリペンコ 名倉有里 訳 (集英社) ルカシェンコ長期独裁政権下のベラルーシが場面設定されている。必然的に社会派小説ということになり、政権批判が内包されているので、ベラルーシ国内ではこの作品は販売禁止であり…

本の感想「手紙」ミハイル・シーシキン

本の感想「手紙」ミハイル・シーシキン 名倉有里 訳 (新潮社) 分かりにくい作品だった。2人の書き手による書簡形式をとっているが、いわゆる「往復書簡」ではなく、それぞれに「片道書簡」になっている。従軍しているワロージャとその恋人に設定されてい…

本の感想「陽気なお葬式」リュドミラ・ウリツカヤ

本の感想「陽気なお葬式」リュドミラ・ウリツカヤ 名倉有里 訳 (新潮社) ロシア文学には馴染みが薄くて、「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」ぐらいしか読んでいない。現代作家の作品をいくつか読んでみることにした。3冊借りてきていて、この作品から読んで…

本の感想「限界国家」楡周平

本の感想「限界国家」楡周平(双葉社) ジャンルで言えば「経済小説」ということになるのだろう。日本の近未来を様々な観点からこうなるであろうと予想している。一番のベースになっているのは少子高齢化と人口の減少。この傾向は根拠がはっきりした数値なの…

本の感想「言葉の白地図を歩く」奈倉有里

本の感想「言葉の白地図を歩く」奈倉有里(創元社) 著者はロシア語の翻訳家であり、自身のロシア語との関わり方を紹介にしながら、外国語の習得や付き合い方を説く。 日本の外国語学習というのは英語一辺倒(私が大学受験する頃には文学部に仏文科や独文科…

本の感想「人生激場」三浦しをん

本の感想「人生激場」三浦しをん(新潮社) 2003年の出版なので、著者はまだ20歳代。週刊新潮の連載エッセイを書いた最年少記録をもっているのではないだろうか?ひょっとして読んだことがあったかもしれないと思いつつ読み始めたのだったが初読だったようだ…

本の感想「安西水丸 東京ハイキング」安西水丸

本の感想「安西水丸 東京ハイキング」安西水丸(淡交社) 安西氏のお気に入りの散歩道を睦月から師走まで訪ね歩いて紹介したイラストと俳句付きのエッセイ。実際にこの本を片手にそれぞれの散歩道を歩いてみるとよいものだろう。東京地方に住んでいないから…

本の感想「白鶴亮翅」多和田葉子

本の感想「白鶴亮翅」(はっかくりょうし)多和田葉子(朝日新聞出版) そもそも「白鶴亮翅」とは何のことか分からない。分かる人はごく少数だろうと思う。これは太極拳の用語であり、鶴のように羽を広げた型で相手の攻撃を防御する姿勢なのだそうだ。太極拳…

本の感想「ポストコロナの生命哲学」福岡伸一、伊藤亜紗,藤原辰史

「ポストコロナの生命哲学」福岡伸一、伊藤亜紗,藤原辰史(集英社新書) ヒトとウイルスは共存する関係にある。だから新型コロナウイルスの対応として「戦い、打ち勝つ」というのはそもそも間違いだ。この度のコロナウイルスも撲滅できるものではないし、こ…

本の感想「時を追う者」佐々木譲

「時を追う者」佐々木譲(光文社) 小説家がタイムスリップを作品に導入するときにどんな仕掛けをすれば読者により受け入れられるかを工夫しなければならないものだろう。なにしろ、それ自体が荒唐無稽なことだから。このことについてはかなり大雑把に処理さ…

本の感想「山の本棚」池内紀

「山の本棚」池内紀(山と渓谷社) 山岳の月間雑誌「山と渓谷」に連載したエッセイをまとめたもの。2007年1月号から2019年10月号の長期にわたった。池内氏は2019年8月に亡くなっている(享年78)のでご存命のうちはずっとこの連載を書き続出ていたことになる…