2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

本の感想「校閲記者も迷う日本語表現」毎日新聞校閲センター

本の感想「校閲記者も迷う日本語表現」毎日新聞校閲センター(毎日新聞出版) 身近な言葉の使い方を考察するためにはこのような本は大いに役に立つし、とても興味深い。新聞に連載した記事を元にしているので、まとめて再読したことになるのだが読みごたえは…

本の感想「利尻島から流れ流れて本屋になった」工藤志昇

本の感想「利尻島から流れ流れて本屋になった」工藤志昇(寿郎社) 利尻島は今年初めて訪ねたのでこれまでにない近しい気持ちが出来た。その利尻島出身で現在は札幌の書店に勤務する著者が身辺雑記のようなエッセイを書いた。本屋の内幕とか仕事の現場ルポと…

本の感想「ヒロイン」桜木紫乃

本の感想「ヒロイン」桜木紫乃(毎日新聞出版) 地下鉄サリン事件の指名手配犯だった女性をモデルにした物語。17年間の長い逃亡生活を描いている。主人公は事件の実行犯と当日一緒にいただけであり、犯行には関わっておらず、犯行計画も知らなかった。主人公…

本の感想「ヒトの幸福とはなにか」「生きるとはどういうことか」養老孟司

本の感想「ヒトの幸福とはなにか」「生きるとはどういうことか」(筑摩書房) 2冊同時に刊行された。2003年以降に発行された新聞・雑誌などのエッセイから単行本に未収録だった作品から選んで2冊にまとめたもの。 「ヒトの幸福とはなにか」から「文化の成熟…

本の感想「レペゼン母」宇野碧

本の感想「レペゼン母」宇野碧(講談社) 本文中に解説してあるのだが、書名の「レペゼン」とはrepresent(代表)ということで、ヒップホップは元々地元主義の傾向がありその地域を代表するとか地域を背負っているという意味がある。この作品ではおそらく「出…

本の感想「ゼロ以下の死」C.J.ボックス 野口百合子訳 

本の感想「ゼロ以下の死」C.J.ボックス 野口百合子訳 (講談社文庫) ワイオミング州の猟区管理官ジョー・ピケットが活躍するシリーズものの第8作で、このシリーズは以前何冊か読んだことがあった。6年前に事件に巻き込まれて亡くなった養女から娘の電話…

本の感想「運命のコイン」ジェフリー・アーチャー  戸田裕之 訳

本の感想「運命のコイン」ジェフリー・アーチャー 戸田裕之 訳 (新潮文庫) 1968年ソ連のレニングラードから物語が始まる。主人公はこの町で生まれ育った青年アレクサンドル・カルペンコで大学進学を目指していた。父親が港湾監督官で仲間とともに労働組合…

11月の山行「坊主山」

11月の山行「坊主山」 11月になると山行はオフシーズン休みになります。10月に行った藻岩山と円山で今シーズンはお終いかと思っていました。坊主山は夏ごろ読んだ本で知っていて、目を付けていました。登るならばシーズン最後で少し雪が降ったぐらいの頃がい…

本の感想「文学キョーダイ!!」奈倉有里・逢坂冬馬

本の感想「文学キョーダイ!!」奈倉有里・逢坂冬馬(文藝春秋) 姉弟の対談。奈倉氏はロシア文学研修者・翻訳家で、逢坂氏は小説家。二人とも文学の専門家ということになる。対談後に、こんなにじっくりと二人で話をしたことはなかったと述べているが、3パ…

本の感想「オレたちバブル入行組」池井戸潤

本の感想「オレたちバブル入行組」池井戸潤(文藝春秋) 銀行の人事競争を描く勧善懲悪もの。ある支店の融資課長が支店長の人事をめぐる策略と不正を暴き、それと引き換えに自らの昇進を果たす。銀行に勤務した経験が無いのでこのようなことが実際に起こり得…

本の感想「北海道の貨物列車」原田伸一・伊丹恒

本の感想「北海道の貨物列車」原田伸一・伊丹恒(北海道新聞社) 本のタイトル通りに、北海道の貨物列車についての網羅的な解説書である。トラック輸送に関して2024年問題がしばしばニュースになるようになったが、抜本的な解決法はいまだに模索中といったと…

本の感想「難民調査官」「サイレント・マイノリティ」下村敦史

本の感想「難民調査官」「サイレント・マイノリティ」下村敦史(光文社) 難民の受け入れの可否を決定する仕事に従事する入管の女性職員が主人公になっている。日本は欧米諸国と比べると難民の受け入れ数が少ないがこれには様々な理由がある。審査が過度に厳…

本の感想「幽玄F」佐藤究

本の感想「幽玄F」佐藤究(河出書房新社) 幼い頃から飛行機が好きだった主人公が航空自衛官になり、念願だった戦闘機のパイロットになった。優秀なパイロットとして一目置かれるようになったが、米国での訓練中に操縦時に音速を越えると身体の不調を感じる…

本の感想「老人の美学」筒井康隆

本の感想「老人の美学」筒井康隆(新潮新書) 本書の4番目のテーマは「老人が昔の知人と話したがる理由」とある。冒頭を引用すると「作家の常盤新平が、こんなことを書いていた。彼の父君は会社勤めをしていたが、定年で退職した。その後、お父さんはしばし…

本の感想「なんかいやな感じ」武田砂鉄

本の感想「なんかいやな感じ」武田砂鉄(講談社) 「群像」に2020年4月号から2023年4月号まで連載した時評エッセイをまとめたもの。著者が「いやなかんじ」を抱くことというのは、通り一遍の見方が定着してしまいやすいといういことだ。世の中で起こることは…

本の感想「はじめてであう安野光雅」安野光雅・森田真生

本の感想「はじめてであう安野光雅」安野光雅・森田真生(新潮社・とんぼの本) 安野さんは2020年12月に亡くなったのでもう3年経とうとしている。この本は安野さんが残した膨大なお仕事を紹介してある。多くの作品が取り上げられているが、全てのお仕事のご…

本の感想「宇宙の図鑑」本間希樹

本の感想「宇宙の図鑑」本間希樹(講談社) 著者はNHK R1の人気番組「子ども科学電話相談」で天文・宇宙の分野の回答者のひとり。世界初になるブラックホールの映像作成では世界中の研究者と協力プロジェクトで偉業をなした。この本も「電話相談」と同じよう…

本の感想「絶体絶命アウトドア体験談55」つり人書籍編集部

本の感想「絶体絶命アウトドア体験談55」つり人書籍編集部(つり人社) 釣り人たちが遭遇した様々な危機的な体験をまとめたもの。クマや毒蛇など危険な生物との遭遇、崖などからの落下、ワカサギ釣りで氷が割れて入水、釣船の沈没、高圧電線接触、落雷など状…

本の感想「池上彰が聞く韓国のホンネ」池上彰

本の感想「池上彰が聞く韓国のホンネ」池上彰(朝日新聞出版) 池上氏は朝日新聞社からの依頼があり、平昌オリンピックを前にして度々韓国への取材に出かけた。その取材をもとにした記事や関連する解説でこの本ができた。したがって、本書に載せられた様々な…

本の感想「知らないと恥をかく中国の大問題」池上彰

本の感想「知らないと恥をかく中国の大問題」池上彰(KADOKAWA) 中国の近現代史と目下の状況を分かり易く解説してありとても役にたつ本だと思う。とりわけ「習近平が目指す派遣大国の行方」が詳しく分析されている。権力が一人に集中しているとこういうこと…

本の感想「昭和38年北海道鉄道旅行写真貼」写真:小川峰生 解説:牧野和人

本の感想「昭和38年北海道鉄道旅行写真貼」写真:小川峰生 解説:牧野和人 (フォト・パブリッシング) 写真撮影した小川氏は昭和38年(1963年)に北海道をぐるりと反時計回りで撮影旅をした。その時の記録写真集である。3月1日から11日までの期間に撮影され…

本の感想「緊立ち」乃南アサ

本の感想「緊立ち」乃南アサ(文藝春秋) 警察小説。警視庁には特殊な捜査官がいるもので、通称メモリー・アスリートと呼ばれている人たちもそのひとつだ。いわゆる「写真的記憶術」を持っていて、指名手配された容疑者の顔貌、身体的特徴、容疑の内容、氏名…

本の感想「ガン入院オロオロ日記」東海林さだお

本の感想「ガン入院オロオロ日記」東海林さだお(文藝春秋) 著者がガン手術のために入院したときのことを書いたエッセイだが、その部分は全体のごく僅かしかなくて、その他色々なトピックが収められている。最後には翻訳家の岸本佐知子さんとの対談がある。…

本の感想「トライアウト」藤岡陽子

本の感想「トライアウト」藤岡陽子(光文社) シングルマザーとトライアウトに参加した落ち目のプロ野球選手との出会いを描く。主人公の女性は新聞記者で配置換えでスポーツ担当になったばかり。ある取材でトライアウトに参加していた選手に関心をもった。主…

本の感想「マリエ」千早茜

本の感想「マリエ」千早茜(文藝春秋) 40歳を目前にした主人公は突然配偶者から離婚を求められる。その理由は「恋愛をしたいから」というもの。無茶なというか理由になっていない理由だから、随分無理筋な設定で物語を始めるものだと感じた。主人公は相手が…

本の感想「歌われなかった海賊へ」逢坂冬馬

本の感想「歌われなかった海賊へ」逢坂冬馬(早川書房) 2021年のデビュー作「同志少女よ、敵を撃て」から僅かに2年ほどで第2作となる本書が刊行された。待ち時間があまり長期間にならなかったのは読者にとって無上の喜びである。この作者の持ち味は他に類を…

本の感想「必要最小限のルールで風景写真の傑作をものにする本」

本の感想「必要最小限のルールで風景写真の傑作をものにする本」村田一郎、山本純一(玄光社) 昨今気が付くことだが、長すぎるタイトルの本が多くなった。これもいささか限度を超えて長い。はっきりした目的があるのならば受け入れ難くはないのだが、そうで…