いささかの知識もない歌舞伎についての本でまったくの気まぐれで借りてみた。歌舞伎の登場人物でとりわけ女性の行動と心理とを容赦なく分析・解説したもの。この手の考察は酒井氏の十八番である。歌舞伎解体新書とでも言えそうだ。怨恨、恋情、義理、怨嗟、憐憫など今も昔も人の抱く様々な感情というのは大元は変わることがない。だからこそ伝統的な歌舞伎は今も人気がある。地方に住んでいると歌舞伎を生でみるチャンスはめったにないもので私も見たことはないのだが、ある程度の年齢になれば歌舞伎を鑑賞するメンタリティは自ずと醸成されているものだろう。もし、これから歌舞伎を鑑賞してみようと思う初心者にとっては、この本を一読しておくときっと役立つ。