2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

本の感想「ミッキーかしまし」西加奈子

本の感想「ミッキーかしまし」西加奈子(筑摩書房) 初出が2006~2007年の連載エッセイをまとめたもの。著者が30歳ぐらいだった時の作品である。若い時分には随分と無茶な行動をしていたもので、泥酔しての珍事とか旅行での失敗談とかの気楽なネタによるエッ…

本の感想「楽園の犬」岩井圭也

本の感想「楽園の犬」岩井圭也(角川春樹事務所) 「楽園」はサイパンのことで「犬」はスパイのこと。戦前のサイパンで諜報活動に従事した男性が主人公になっている。東大を卒業して英語の教員をしていたが、喘息の持病があり職を辞した。病状が回復して再就…

本の感想「その世とこの世」谷川俊太郎、ブレイディみかこ

本の感想「その世とこの世」谷川俊太郎、ブレイディみかこ(岩波書店) 二人の往復書簡で、谷川氏は詩を返信する形になっている。谷川氏の詩作が好きな人にとっては垂涎の一冊となるのだろう。谷川氏の詩は残念ながらよく分からないのだが、往復書簡になって…

本の感想「やっぱり英語やりたい!」鳥飼玖美子

本の感想「やっぱり英語やりたい!」鳥飼玖美子(幻冬舎新書) 著者は専門家の立場から政府の英語教育政策に疑問を抱き、大津由紀雄氏、江利川春雄氏、斎藤兆史氏らとともに提言を発してきた。しかしその提言を受けて政府の方針が変わったということはない。…

本の感想「わたしの名店~おいしい一皿に会いにいく」三浦しをん・西加奈子ほか

本の感想「わたしの名店~おいしい一皿に会いにいく」三浦しをん・西加奈子ほか(ポプラ文庫) 28人の著名人が自分のお気に入りの飲食店を紹介する食べ物エッセイ。私自身は外食することはほぼないので、行きつけのお気に入り店というのはない。このような食…

本の感想「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき

本の感想「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき(実業之日本社) 三浦しをん氏のお勧めの本と言うことで読んだ。新宿で保育園の園長をしながら、私立探偵も営む男性が主人公で、この主人公は元警察官だった。保育園の利用者には夜の仕事をしているシングル・…

2023年の映画

2023年の映画 「生きる LIVING」黒沢監督作品のリメイク。ストーリーがしっかりしているし、キャストの演技もよいと思った。見て満足できる。ひとつとても気になったことは列車内の映像で、まったく揺れがない。コンパートメントに座って仕事の同僚たちが話…

本の感想「オール・ノット」柚木麻子

本の感想「オール・ノット」柚木麻子(講談社) 日本の現代から近未来までの設定になっている。ファミリー・ヒストリーとそれに絡む主人公の女性の半生を描いている。 主人公は経済的に余裕のない状況で高校時代を過ごした。在学中からアルバイトをし、家事…

本の感想「安野光雅作品集」大矢鞆音 監修

本の感想「安野光雅作品集」大矢鞆音 監修 (東京美術) A4版の作品集で見開きがA3になるから大判で鑑賞できる。しかし、本の「のど」が作品を分割してしまうことになるのが残念に思った。それでも安野作品の魅力は十分に楽しめる。初期のころから晩年の作品…

本の感想「泳いで帰れ」奥田英朗

本の感想「泳いで帰れ」奥田英朗(光文社) 2004年のアテネオリンピックの観戦記で雑誌「小説宝石」に掲載されたものを書籍化した。随分と昔のことであるし、元々オリンピックにはあまり関心がないし、2020東京オリンピックのすったもんだでIOCが質の悪い興…

本の感想「三四郎はそれから門を出た」三浦しをん

本の感想「三四郎はそれから門を出た」三浦しをん(ポプラ社) 初出が2002~2006年までのエッセイや書評を収めたもの。図書館の書架にあったのだがこれまで目に入らなかったらしくてこの度ようやく読んだ。この本の出版は2006年なので随分長い間私の目を逃れ…

本の感想「お友だちからお願いします」三浦しをん

本の感想「お友だちからお願いします」三浦しをん(大和書房) エッセイ集で初出一覧を見ると、2006年から2012年までに色々な雑誌、新聞などで発表されたもの。内容はユルユルした感じで楽しく読める。再読だったが前に読んだのはかなり前だったので、内容を…

本の感想「実録自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO」佐藤守

本の感想「実録自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO」佐藤守(講談社) 三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」で紹介された本。三浦氏も色々な本を読むものだと思った。2010年の発刊で内容はかなり古く最近の情報は載っていない。むしろUFOをめぐる歴史的な…

本の感想「灯台守の話」ジャネット・ウィンターソン 岸本佐和子 訳

本の感想「灯台守の話」ジャネット・ウィンターソン 岸本佐和子 訳 (白水社) 三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」で紹介された本。父を亡くして母と二人暮らしだった娘が主人公。自立できる年齢になる前に母を事故で亡くしてしまった主人公は縁があって灯…

本の感想「ゴーストハウス」クリフ・マクニッシュ 金原瑞人・松山美保 訳

本の感想「ゴーストハウス」クリフ・マクニッシュ 金原瑞人・松山美保 訳 (理論社) 三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」で紹介された本。タイトル通りの幽霊屋敷の話。幽霊屋敷ということを知らずに引っ越してきた母と息子が主人公となっている。4人の子供…

本の感想「わが夕張わがエトロフ」佐々木譲

本の感想「わが夕張わがエトロフ」佐々木譲(北海道新聞社) 三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」で紹介された本。2008年に刊行されたルポ・エッセイ集だ。佐々木氏と夕張とエトロフにどういうつながりがあったかと言うと次のようなことだ。佐々木氏の父親が…

本の感想「BESTっす!」ゲッツ板谷

本の感想「BESTっす!」ゲッツ板谷(小学館) 三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」で紹介されていた本。初めて読む作家だった。数冊の単行本に書かれたエッセイからベストを選んでまとめたもの。内容はかなりのバカ話でそういうものとして気楽に読む本である…

本の感想「安曇野の白井庭」丸山健二

本の感想「安曇野の白井庭」丸山健二(新潮社) 三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」で紹介の本。安曇野の350坪の土地に自宅を持ち、その広い庭を自力で造成するという記録。園芸の素人が取り組むにはかなり難しいタスクであるが、著者はほとんど独学で試行…

本の感想「青いバラ」仲のりこ

本の感想「青いバラ」仲のりこ(日本文学館) 童話7作品を収めている。西垣通氏が著書「デジタル社会の罠」で推薦していたので読んでみた。このような童話集を手にする機会は滅多にないものだ。清々しく、篤実な生き方が描かれるストーリーなので今の世の中…

本の感想「本が多すぎる」酒井順子

本の感想「本が多すぎる」酒井順子(文春文庫) 書名は本文中に紹介されている書店で聞こえてきた会話に基いているらしい。「都心の大きな本屋さんに行ったら、「ちょっといっぱいありすぎるじゃねぇのかー、本!」 というおじさんの声が聞こえてきたのだっ…

本の感想「超デジタル世界」西垣通

本の感想「超デジタル世界」西垣通(岩波新書) どのような専門的な分野でもその専門性を語る時にはいくつかの違った見解があるものだろう。一般の人たちに分かり易い説明ができているか、信用性があるかも問われる。西垣氏はデジタル世界の解説者として信頼…

本の感想「本屋さんで待ちあわせ」三浦しをん

本の感想「本屋さんで待ちあわせ」三浦しをん(大和書房) 2012年の発刊なので紹介されている本は少し古いものということになる。三浦ファンとしては大変興味深い。読みたい本をリストアップしていくことになる。かなり絞ってメモしていったところ9冊になっ…

本の感想「新・地図のない旅III」五木寛之

本の感想「新・地図のない旅III」五木寛之(平凡社) シリーズの最終巻となるエッセイ集で、北国新聞、富山新聞の2紙を基点として全国の地方紙に連載したものを収録している。五木氏は月に1回、NHKの「ラジオ深夜便」でお話をされているが、このエッセイは聞…

本の感想「ガラム・マサラ!」ラーフル・ライナ  武藤陽生 訳

本の感想「ガラム・マサラ!」ラーフル・ライナ 武藤陽生 訳 (文藝春秋) インドの作家の作品を読むことはもしかすると初めてかもしれない。という興味もあって読むことにした。 主人公は「教育コンサルタント」を自称していて、仕事の実態は大学入試の替え…

本の感想「デジタル社会の罠」西垣通

本の感想「デジタル社会の罠」西垣通(毎日新聞出版) 毎日新聞に連載した記事と書評などをまとめてある。著者は長年コンピューター研究と開発の最前線で活躍してきた。その後、いくつかの大学で情報学の研究と教育に携わっている。速すぎるAI技術の進歩に人…

本の感想「竜血の山」岩井圭也

本の感想「竜血の山」岩井圭也(中央公論新社) 道東の留辺蘂町にあったイトムカ鉱山をモデルにして書かれている。主人公は水銀鉱山の採掘現場労働者。この鉱山が開かれる前に、山中の小部落で密かに暮らしていた人たちには生まれつき水銀毒に耐性があったと…

本の感想「可燃物」米澤穂信

本の感想「可燃物」米澤穂信(文藝春秋) 敏腕警部が事件解決に活躍する警察小説。名探偵ものといってもいいのだろう。主人公の警部はちょっと癖があり、とっつきにくい感じ。この人が上司だったら部下は煙たい印象も持ちそうだ。 エピソードは5つ収められ…

本の感想「プリズン・ドクター」岩井圭也

本の感想「プリズン・ドクター」岩井圭也(幻冬舎文庫) 刑務所に常駐する医師の物語で、序章、終章の他に4つのエピソードを収めている。世の中にはこういう仕事があるのかと新しい知識を得た。実際のところ、今はどういう状況なのか分からないが、この物語…

本の感想「ツナグ」辻村深月

本の感想「ツナグ」辻村深月(新潮社) 主人公は死者と生者を「ツナグ」役割を担っている。両者の意向が合えば一晩だけ亡くなった人があたかも生きていた時と同じようにホテルの一室に現れる。こういった荒唐無稽の仕掛けがこの作品の主要な設定になっている…

本の感想「完全なる白銀」岩井圭也

本の感想「完全なる白銀」岩井圭也(小学館) 山岳小説と言ってもいいのだろう。主人公の女性カメラマンがアラスカのデナリ冬季登頂を試みる。友人の女性クライマーが冬季単独登頂を成し遂げた後で遭難した。「登頂していないのではないか」という疑惑が沸き…