本の感想「縁切りの宿」川越宗一

本の感想「縁切りの宿」川越宗一(文芸春秋)2026_08

  江戸末期から明治初期までの町人の離婚をテーマにした連作短編6作品を収める。上州にある満徳寺はいわゆる駆け込み寺だ。何らかの理由で離縁したいが自力で解決できない女性が最後の手段として利用する。寺と連携した桂屋という宿泊施設があり、寺に助けを求めた女性の世話をする役割を担う。女性は寺の庇護のもとに25か月過ごした後には夫の同意がなくても離婚する権利を有する。この仕組みは「生活の知恵」として経験的に出来上がったもののように思える。今は離婚で夫婦間の意見が合わなければ家庭裁判所が調停するケースが多いのだろう。現行の法制度では宗教団体が民事に介入することを認めないのでこの仕組みは存続しえない。でも司法によらない方法論もあればより穏当な仕組みとして機能する可能性はありそうにも思った。桂屋は行政官への手続申請を仲立ちするという仕組みになっている。満徳寺に駆け込む女性には様々な事情がある。中にはペーパー離婚を企てる女性もいるし、夫婦間での同意があっても妻の実父だけが反対しているという事例もある。最終話は明治初期になって行政の仕組みが様変わりした中で、当事者が高崎と東京との役所を盥回しにされる状況が描かれる。このような歴史小説というのは相当な史料を元に書かれているものだから、本書にある町民たちの離婚状況はまあまあ日常的に起こっていたのだろう。そう考えると興味深い。一番気に入ったのは第3話の「春雷のあと」で、ラストでは離婚を申し立てた妻の壮大な策略が明らかになる。

9月の山行 黒岳ー北海岳ー白雲岳 2026_09_25

9月の山行 黒岳ー北海岳ー白雲岳 2026_09_25

 ここ3年連続で9月の連休後に大雪山を訪ねています。昨年は銀泉台から白雲岳へのルートでしたが、今回は黒岳から白雲岳へのルートにしました。40年ぐらい前に友人と黒岳ー赤岳の縦走をしたことがあったのですが、ほぼその記憶がなくなっています。白雲岳の分岐まではその時と同じルートですが、この度歩いてみると初めてのように感じました。

白雲岳山頂からの眺め トムラウシ方面

 24日12:46に出発しました。岩見沢ICから高速道に入ります。天気予報通りに雨が降ってきてだんだん本降りになりました。旭川を過ぎたあたりで雲が切れてきて青空が見えてくると雨はだんだんと止んでいきました。上川町の層雲峡オートキャンプ場には15:42に到着です。2h56mでここまで204㎞。早速受付をします。利用料は1泊で¥1300です。3年連続のリピート利用なので手続きはスムーズでした。小雨が降っていてテントを張るのはあきらめて車中泊することにしました。実はシュラフの下に敷くマットを忘れてしまったのでどっちみちテント泊はできませんでした。この車での車中泊は初めてです。まずは層雲峡の黒岳温泉に行きました。料金は¥800に値上がりしていました。昨年は¥600でした。17時前にはキャンプ場に戻りました。

駐車場所を決めました。

キッチン設備のある建物の近くに駐車しました。夕食は自宅近くのイオンで購入したアサリご飯の弁当とカップ麺です。施設に電子レンジもあるので弁当は温めて食べました。その後少し文庫本を読んで過ごしたのですが、寒くなってきたので車に入って休むことにしました。テント泊でも眠れないのですが、車のシートはフルフラットにならないのでかなり窮屈です。深夜にトイレを使った後に先週モンベルで購入したコンパクトマルチシート(保温用シート)をシュラフの上からかけてみました。あまり効果を感じませんでした。眠れずに過ごしましたが5:01にアラームをセットしてあったので行動開始しました。朝食にはパンを食べて5:25にキャンプ場を出ます。車の温度計は3度でした。ロープウェーは6:00始発ですので十分間に合いました。5合目駅からはリフトへ乗り継ぎますがリフト営業は6:30からでした。駅の展望台へ登って撮影してからリフトに乗り換えました。

展望台からの眺め

展望台からの眺め

展望台からの眺め

リフトから見える黒岳

リフトを降りると7合目です。入山名簿に記入して6:51に登山開始しました。黒岳山頂までは高度を稼ぐ単調な登りです。登り始めて身体が温まってきたのでアウターを脱ぎました。着衣はドライ素材のノースリーブと長袖Tシャツその上に半袖Tシャツです。この着衣で顔以外は汗をかかないで登れました。まだ人が少なくて数名追い越して7:42に山頂に着きました。ここまで51分かかりました。たまたま誰もいませんでしたが写真撮影しているうちに数名登ってきました。

9合目の手前、紅葉も進んでいます。

9合目の表示

山頂までもう少しです。

山頂の標柱

山頂からの眺め

山頂からの眺め 石室へ至る道

山頂からの眺め

距離表示

山頂からの眺め

先が長いのであまりゆっくりせずに、行動食としてパック入りのアミノバイタルゼリー(レモンスカッシュ味ビッグサイズ250g)を少しとお茶を飲んで7:56にスタートしました。石室へ下ります。

石室までの下り

石室からは分岐を左に進んでいきます。少し下っていくと渡渉がありました。水量が多いと石伝いに渡れないかもしれません。沢沿いの道をしばらく進むと緩い登りになります。北海岳までは平坦部と登りが続きます。紅葉がきれいなところがありました。

紅葉がきれいです。

チングルマの綿毛

紅葉がきれいです。

渡渉があります。

沢沿いを進みます。

9:12北海岳に着きました。山頂付近はなだらかで丸みのある形状で植生も岩もなくざらついた地面が露出しています。旭岳方面から3人のパーティがやってきました。旭岳のCSで前泊したのでしょう。行動食はアンパン(小)1つ、ライトミールブロック1ピース、ポリッピー少しとお茶をとりました。ここもあまりゆっくりしないで9:31に出発しました。

山頂の標柱

山頂からの眺め

距離表示

山頂からの眺め

山頂からの眺め

距離表示

白雲岳を正面に見ながら進みます。一旦下ってからはゆるい起伏が続きます。分岐の手前でナキウサギの声が聞こえてきました。しばらく待ってみたのですがあいにく姿を目視できませんでした。分岐の手前は少し登りがあります。分岐でレインウエアのアウターを着て手袋も着けました。残り1㎞を進みます。最後の方で緩い登りがあり、山頂直下はイワイワゾーンなので手も使って登ります。10:43白雲岳に登頂しました。3h52mかかったのでかなりの長丁場でした。ヤマップのデータでは7合目リフトから往復で16.8㎞で「のぼり/くだり」が1356mになっていますが、最近の活動日記には二人の記録があってそれらのデータでは18㎞を超えています。実際には17.5㎞ぐらいでしょうか。因みに、撮影してきた距離表示を見てみると「7合目リフト~黒岳が1.5㎞、黒岳~石室が0.8㎞、石室~北海岳が2.7㎞、北海岳~白雲分岐が2.4㎞、白雲分岐~白雲岳が1.0㎞で合計すると8.4㎞です。往復にすれば16.8㎞なのでヤマップデータと一致しています。山頂には数名先行者がいました。銀泉台から入った人が多いのだろうと思います。

ナキウサギの声が聞こえる辺り

白雲岳への分岐

山頂からの眺め

山頂からの眺め 十勝岳の噴煙が見えます。

山頂からの眺め

山頂からの眺め

山頂からの眺め

山頂からの眺め

山頂の標柱

山頂からの眺め

山頂からの風景は雄大です。十勝岳の噴煙も見えました。行動食はゼリーの残りとライトミールブロックを1ピース、レーズンロールパン(小)1つ、ポリッピー少しです。もっとゆっくりしたいのですが、復路も長いので30分ほどの滞在で11:15に下山開始しました。北海岳が近づいてくるとやや長い登りになります。後半戦に入っているので無理しないでゆっくりと歩きました。12:15~12:20北海岳で小休止。この先は下り基調となります。上空に少し雲が出てきて日差しが入ったり陰ったりします。13:07石室に着いて小休止します。ここでウエア調整でレインウエアと手袋を脱ぎました。黒岳への登山道には団体が長い列になっているのが見えます。山頂で集団より先行しないと混雑で大変なことになります。13:11にスタートして登っていきます。山頂に着く前に団体の最後尾に追い付いてしまいました。韓国人の団体でした。様子を見つつ声掛けしながら少しずつ追い抜いていきます。山頂にはこの団体を含めて50~60人ぐらい滞在していました。団体の人たちが動きだす前に降ります。13:28に山頂を通過しました。この先も、韓国人の団体の早めの人たちがいましたが、数名の集団に分割していたのでうまく躱していくことができたのはラッキーでした。この時間帯でも登ってくる人もいるので対向者も少なくありません。団体登山というのはできるだけ避けるべきなのだと思います。長い行列にならないように小集団に分割して動くように調整しないと具合が悪いです。あの大集団がどんなふうに下山したのか気がかりです。14:07にリフト駅に到着、山頂からの復路は39分かかりました。白雲岳までの往復では7h16mでした。ロープウエー駅に着くとちょうどよく14:30の便があったので待たずに乗車できました。層雲峡駅に着いて一休みします。行動食のレーズンパンが1つとお茶が残っていたので昼食にしました。水分は525㏄ボトルのお茶で少し余りました。夏場だったらペットボトル2本必要でしょう。14:48駐車場を出発しました。夕焼けがきれいで、日没後に空の明るさが残っているうちに満月が見えてきました。今日は中秋の名月です。ノンストップで走行して17:56に帰宅しました。2h59mでロープウエー駅からは211㎞でした。

 今年も秋の大雪を満喫することができました。ヤマップの活動日記を見ると銀泉台は紅葉はきれいだったようです。黒岳、北海岳と2つの山頂を超える長めのルートなので白雲岳山頂での時間が短めだったのが残念でした。これは行程の都合上やむを得ません。天気はこの日を逃すと下り坂でしたからいい日和を選べました。車中泊はもう少し快適にする工夫が要ります。今回は結果的にテント泊にしないでよかったです。朝、テント撤収にかかる時間を省略できますので。黒岳から入るルートでは北海岳から間宮岳方面へ周回してお鉢巡りするのもよさそうです。来シーズンは花の季節に訪ねるのもよさそうです。

本の感想「おのぞみの結末」星新一

本の感想「おのぞみの結末」星新一(新潮文庫)1976_03

 11作品を収める。ショート・ショートとしてはやや長めの作品が多い。表題作の「おのぞみの結末」は銀行員の若者が大金の現金輸送を命じられる話。彼はジャックポット教という宗教の信者だった。たまたまこの用務に同行することになった人物も同じ宗教の信者だった。用務を離脱して現金を持ち逃げすることを画策する。「空の死神」では飛行中にトラブルを起こした旅客機が墜落していくまでの時間を描く。不思議なことに乗客たちは皆このまま死にたいと望んでいる。客室乗務員が乗客から聞き取った話はどれも絶望を肯定するものだった。他の9作品も意外な結末の切れ味がよい。

 

本の感想「ウォーターゲーム」吉田修一

本の感想「ウォーターゲーム」吉田修一(幻冬舎)2018_05

AN通信というスパイ組織に所属する鷹野が主人公で、以前、本作の前作を読んだことがあった。スパイ・アクションものなので人物関係がかなり複雑になっている。誰が寝返るか分からない。日本の水資源をめぐって海外の勢力が利権を得ようとする。従来の水インフラを一旦すっかり壊してしまうという荒っぽい計画で、国内のダムをいくつか破壊するという。水資源をビジネス化して金儲けを企てるという狙いは分からないでもないが、ダムの爆破というのはいかにも荒唐無稽だ。そもそもこの計画にはある有力な議員が絡んでいたのだが、ダムの破壊などの無理筋があり頓挫していた。しかし、この計画が海外の巨大組織に乗っ取られて動き始めた。1つのダムが爆破されて多くの人々が犠牲になった。AN通信の鷹野らが計画の阻止に動き始める。映画の「ミッション・インポッシブル」に出てきそうな展開になっていく。スパイ・アクションとしてはそれなりの出来具合なのだろうが、面白さの観点からするといまひとつのように思えた。

本の感想「隣の畑は青々と」川﨑秋子

本の感想「隣の畑は青々と」川﨑秋子(U‐ NEXT)2026_06

 帯広に近い農業主体の町で生活する人々をドキュメント風に描いた物語。連作で1~7章の構成になっている。各章ごとに主人公が異なるのだが、中心になっている家族は50代の夫妻(修司と亮子)で、高校生の娘と修司の母親と同居している。この町には大勢の人を雇って大規模な農場を経営している人もいるし、農家に婿養子で入って義父と3人で暮らしている家族もいる。あるいは早期退職後東京から移住して喫茶店を開いた夫婦もいる。さまざまな人がそれぞれの立場で何か困りごとを抱えたり、それを解決したりしながら日々の暮らしを営んでいる。十勝地方の農業経営者たちの現実に密着取材したような仕上がりだ。何か大事件が起こるということはないものの、人々がどんなことを思って暮らしているかが伝わってくる。

 

本の感想「NANOOK」星野道夫

本の感想「NANOOK」星野道夫(クレヴィス)2026_07

 本書は星野道夫の写真集でこの度出版された。出版のことは知らなかったのだが、たまたま図書館の新刊コーナーで見つけた。NANOOKは現地語でホッキョクグマのことで本書に収められているのはホッキョクグマのみである。過去に発表された作品をまとめたもので、本書で初出の作品があるのかどうかは分からない。星野さんの作品はデジタル以前だったので、原版はリバーサルフィルムで残されている。1996年に亡くなったのだから少なくとも撮影後30年以上は経過している。保存管理はしっかりしてあるのだと思うが、物理的に原版の退色や変色は避けられない。おそらくデジタルデータ化しているのだろう、本書の印刷は良好である。ホッキョクグマはアザラシを捕食する大型の肉食獣であるが、星野さんの写真からは獰猛さや荒々しさは読み取れない。むしろとても穏やかで静寂感のあるシーンが捉えらている。どこまでも広がる雪原に1頭だけ写された作品には深い寂寥感が表現されている。

本の感想「年とる力」阿川佐和子

本の感想「年とる力」阿川佐和子(文春新書)2026_05

 72歳になった著者が高齢者として生きる心構えなどを記したエッセイ。日々の暮らしぶりを紹介していて、指南書というよりも一つの事例報告である。とどのつまりは、自分が無理なくできることを日々やっていくしかないということに尽きる。高い目標を掲げてその実現のためにがむしゃらに努力する必要はないと説く。確かにその通りで共感できる。著者は私よりもいくらか年上だけれども、執筆その他でまだ現役で働いている。定年のあるサラリーマンと違っていつ引退するかも自分で決めなければならない。まだまだお元気そうだし、仕事のオファーもあるわけだから早々には隠居することはなさそうだ。