2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

本の感想「鳩護(はともり)」川﨑秋子

本の感想「鳩護(はともり)」川﨑秋子(徳間書店) 著者の作品は北海道の明治~昭和までの時代に生きた人々と野生とを描いたものを読んできた。この作品は現在の東京を舞台にしてある。主人公の女性はマスコミ関係の仕事をしている。ある時、住居のベランダ…

撮影 2月28日 大滝百畳敷洞窟

撮影 2月28日 大滝百畳敷洞窟 この洞窟の氷筍のことを知ったのは、25日に見たYou tube動画によります。ぜひ今シーズン中に行こうと計画を立てます。ネット情報はヤマップの活動日記が頼りになります。雪山の経験も装備もないので、果たして行けるのかどうか…

本の感想「望み」雫井脩介

本の感想「望み」雫井脩介(角川書店) 雫井氏の作品は過去にいくつか読んだ記憶があるが、特に強い印象は残っていなかった。この作品もたまたま手に取ってみたものだ。 4人家族の平穏な生活にちょっとした綻びが見え始めた。高校生の息子はサッカーが得意で…

本の感想「土に贖う」川﨑秋子

本の感想「土に贖う」川﨑秋子(集英社) 短編7作品を収める。いずれも北海道の明治~昭和期を舞台にしている。札幌桑園地区の養蚕業、北見のハッカ、野付半島のミンクの養殖、江別のレンガ産業などの隆盛から衰退を描く。北海道の近現代史を地域ごとにフォ…

本の感想「ひみつのしつもん」岸田佐和子

本の感想「ひみつのしつもん」岸田佐和子(筑摩書房) 雑誌「筑摩」に連載したエッセイで2019年時点で18年刊継続しているそうだ。シリーズになっているので以前にも何冊かエッセイ集を読んでいる。初めの方を読んでいて、再読しているような気になったのだが…

本の感想「もうあかんわ日記」岸田奈美

本の感想「もうあかんわ日記」岸田奈美(ライツ社) 初めて読む作家でこの本についても予備知識はゼロだった。当たりはずれは読んでみないと分からない。著者は東京をベースに働いているが、実家は神戸にある。実家には心臓の大手術を受けて車椅子生活になっ…

本の感想「ガラスの城壁」神永学

本の感想「ガラスの城壁」神永学(文藝春秋) 何の予備知識もなくたまたま手に取った本である。行き当たりばったりの本が「当たり」になる可能性はあまり高くはないものだ。この本も「外れ」と言えばそうかもしれない。ストーリーは分かり易いし、長編でもな…

本の感想「夜明けを待つ」佐々涼子

本の感想「夜明けを待つ」佐々涼子(集英社インターナショナル) 佐々さんの本は昨年まとめて何冊か読んだがいずれもすぐれたノンフィクションで感銘を受けた。死をとりあつかった作品も多く、ターミナルケアについては「エンド・オブ・ライフ」がある。著者…

本の感想「プーチンの10年戦争」池上彰・佐藤優

本の感想「プーチンの10年戦争」池上彰・佐藤優(東京堂出版) プーチン大統領の演説を池上氏と佐藤氏が読み解く対談で、かなり専門的なレベルである。二人の博覧強記が容赦なく見解を披瀝し合うので、読者を選ぶ本だと思われた。私にはいささか難解すぎた。…

本の感想「扉の向こう側」ヤマザキマリ

本の感想「扉の向こう側」ヤマザキマリ((マガジンハウス) ヤマザキ氏がこれまで出会った人たちとの思い出話を記したエッセイ集で、それぞれのエピソードには著者自身による絵が添えてある。ヤマザキ氏のマンガ作品は読んだことがなくて、専ら著作を読んだ…

本の感想「嘘と正典」小川哲

本の感想「嘘と正典」小川哲(早川書房) 短編6作品を収める。どちらかと言えば、凝った設定になっている感じがした。作品によってはストーリーをいくらか分かりにくくしてあると評したら言い過ぎだろうか? 6作目はスパイ小説だと思って読んでいたら、SF的…

本の感想「正直者ばかりバカを見る」池田清彦

本の感想「正直者ばかりバカを見る」池田清彦(角川新書) 著者のメールマガジン2015年4月~2017年3月までの配信をまとめたもの。5分野に分類してある。「昆虫食はエコロジカル」にはこのような記載がある。「牛では1キログラムの体を作るのに10キログラムの…

本の感想「アホの極み 3・11後どうする日本!?」池田清彦

本の感想「アホの極み 3・11後どうする日本!?」池田清彦(朝日新聞出版) 週間朝日に2010年4月から2012年8月に連載したエッセイで、ひと昔前のが題材になっている。民主党政権はこの頃だったのでしばしばネタになっている。 世間的にこうなっているとという…

本の感想「ユートロニカのこちら側」小川哲

本の感想「ユートロニカのこちら側」小川哲(早川書房) 普段あまりSF作品を読むことがないが、この作品は第3回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作である。ストーリの設定は近未来のサンフランシスコのある種の特別エリア。巨大IT企業が設営した居住区でそこの…

本の感想「貧乏ピッツァ」ヤマザキマリ

本の感想「貧乏ピッツァ」ヤマザキマリ(新潮新書) この本を読む限りヤマザキ氏はとりわけ美食家ではないように思われる。ヤマザキ氏がイタリア留学中の経済的に苦しかった頃に、どんな食生活だったのかを記してある。安くて、まずまず美味しくて、調理が簡…

本の感想「池上彰の若い読者のためのアジア現代史①大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国)」池上彰

本の感想「池上彰の若い読者のためのアジア現代史①大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国)」池上彰(あすなろ出版) 若い読者のみならず分かり易いことを求める読者にとってはうってつけの本。現代史なので韓国については1895年日本が日清戦争に勝利して植民地…

本の感想「街場の米中論」内田樹

本の感想「街場の米中論」内田樹(東洋経済新報社) 書名は米中論だが、アメリカ論は1~7章で、中国論は第8章、第9章が「米中対立の狭間で生きるということ」という構成なってなっている。 まず、ロシアのウクライナ侵攻についての内田氏の予想は、「一時的な…

本の感想「納棺夫日記 増補改訂版」青木新門「それからの納棺夫日記」青木新門

本の感想「納棺夫日記 増補改訂版」青木新門(文春文庫) 「それからの納棺夫日記」青木新門(法蔵館) 前者は映画の「おくりびと」の原案になった作品だが、著者の意向により映画のクレジットにはそのことは示されなかった。 納棺師として経験した出来事が…

本の感想「エヴァーグリーン・ゲーム」石井仁蔵

本の感想「エヴァーグリーン・ゲーム」石井仁蔵(ポプラ社) チェスプレイヤーが織りなす物語。登場人物は子供の頃に様々なきっかけでチェスに出合った。ある者は難病を患い長期入院中に同年代の患者から習った。ある者は親の期待でピアノのレッスンを受け続…

本の感想「インソムニア」辻寛之

本の感想「インソムニア」辻寛之(光文社) 作品中では架空の国名にしてあるが、南スダーンへの自衛隊PKO派遣を下敷きにして書かれている。いわゆる駆けつけ警護で出動した部隊が「戦闘」に遭遇して死者が1名を数えた。帰国した部隊の自衛官の中には自殺した…

撮影「北大苫小牧研究林 2月12日」

撮影「北大苫小牧研究林 2月12日」 冬の撮影をしないうちに立春は過ぎてしまいました。明日は季節外れの暖気が入って来て気温は10度を超えるという予報がでています。昨年秋に初めて訪ねた北大苫小牧研究林へ行ってみることにしました。駐車場は広く除雪され…

本の感想「不意撃ち」辻原登

本の感想「不意撃ち」辻原登(河出書房新社) 宮部みゆき氏の書評集で見つけた本で短編5作品を収める。読み始めてすぐに以前に読んだことがあると分かった。ストーリーは思い出さなかったが、断片的な場面を記憶していた。5作品目の「月も隅なきは」が一番よ…

本の感想「誰そ彼の殺人」小松亜由美

本の感想「誰そ彼の殺人」小松亜由美(幻冬舎) 先に読んだ同じ作者の「遺体鑑定医加賀谷千夏の解剖リスト」の前作にあたる。登場人物は異なるが手練れの法医学解剖医と一緒に仕事をする解剖技官と警察官たちが登場するのは同じである。場所は仙台で2作目の…

本の感想「ゴキブリ・マイウェイ」大崎遥花

本の感想「ゴキブリ・マイウェイ」大崎遥花(山と渓谷社) 自然科学分野の気鋭の研修者でクチキゴキブリの行動生態を専門としている。この分野の研究は著者が世界でただ一人という。とにかく面白い。クチキゴキブリの特徴は番が互いに翅の食い合いをすること…

本の感想「戦争語彙集」オスタップ・スリヴィンスキー ロバート・キャンベル訳

本の感想「戦争語彙集」オスタップ・スリヴィンスキー ロバート・キャンベル訳(岩波書店) 戦火のウクライナで市井の人々が語った言葉を収録したもの。スリヴィンスキー氏はウクライナの詩人で現地の避難民や居住者たちから体験談を聞き取った。その証言に…

本の感想「ともぐい」川﨑秋子

本の感想「ともぐい」川﨑秋子(新潮社) この本を図書館で予約したときには、直木賞の候補作品だと知らずにいた。順番待ちの間に受賞した。受賞後は予約件数が跳ね上がるので返却時には50人以上が待機となっていた。早めに予約しておいたのでよかった。 物…

本の感想「未明の砦」太田愛

本の感想「未明の砦」太田愛(角川書店) 自動車製造会社の非正規労働者たちの労使闘争をテーマにしている社会派のストーリーで、今から半世紀近く前のルポルタージュ「自動車絶望工場」(鎌田慧)を思い出した。当時は季節工と呼ばれていた非正規労働者の状…

本の感想「一気にわかる!池上彰の世界情勢2023」池上彰

本の感想「一気にわかる!池上彰の世界情勢2023」池上彰(毎日新聞出版) このシリーズはこれで3冊読んだことになる。いずれも分かり易い。2022年の出来事を振り返り、2023年を展望した解説で昨年の1月に刊行されたもの。22年度の大きな事件はロシアのウクラ…

本の感想「僕はなぜ一生外国語を学ぶのか」ロバート・ファウザー 稲川右樹 訳

本の感想「僕はなぜ一生外国語を学ぶのか」ロバート・ファウザー 稲川右樹 訳(クオン) 著者はアメリカ人でミシガン大学では日本語と日本文学を専攻した。若い時分から多言語の学習をしてきたマルチリンガルである。この本は韓国語で書かれたもので、稲川氏…

本の感想「北海道犬旅サバイバル」服部文祥

本の感想「北海道犬旅サバイバル」服部文祥(みすず書房) かなり変わった冒険記で、著者は2019年10月1日に宗谷岬から徒歩で南を目指した。同行するのは飼い犬できちんとした猟犬の訓練は受けていないが、それなりに猟犬の役割も果たす。分水嶺をできるだけ…