2024-01-01から1年間の記事一覧

本の感想「老いと孤独の作法」山折哲雄

本の感想「老いと孤独の作法」山折哲雄(中公新書ラクレ) 書名が自分向きだったので予備知識なしで読んだ。どんなことでも作法を身に着けるのにはそれなりの修練と覚悟がいる。本書はどういうことをすればいいのかという具体的な指南書とは違っていた。しか…

本の感想「テス」トマス・ハーディ 井上宗次・石田英二 訳

本の感想「テス」トマス・ハーディ 井上宗次・石田英二 訳 (岩波文庫) 先に読んだ「イギリス小説の傑作」で紹介されていた作品の一つで、40年ぐらい前から読もうと思っていた。この度、ようやく読むことにした。日本語のタイトルは「テス」と短縮されてい…

本の感想「spring」恩田陸

本の感想「spring」恩田陸(筑摩書房) バレーのトップレベルの人たちを描く。4つのパートで構成されていて、1つめは主人公のよき友人のダンサーの視点で描かれる。2つ目以降は、主人公の叔父の、3つめはよき友人の作曲家の、最後のパートは主人公自身の…

本の感想「カレーライスの丸かじり」東海林さだお

本の感想「カレーライスの丸かじり」東海林さだお(朝日新聞出版) 週間朝日に長期連載した食べ物エッセイで休刊になった最後の回まで収められている。気楽に読めるもので例えば、「タイ焼きの開き」「コオロギ入りのラーメン」とか「天丼のエビの本数」など…

本の感想「名場面の英語で味わうイギリス小説の傑作 英文読解力をみがく10講」斎藤兆史 髙橋和子

本の感想「名場面の英語で味わうイギリス小説の傑作 英文読解力をみがく10講」斎藤兆史 髙橋和子(NHK出版) 本書の「はじめに」に齋藤氏は次のように記す。「英語学習者が高度な英語力を身につけようとする場合、効果的な勉強法の一つが英語文学の精読です…

本の感想「北海道キャンプ場&コテージガイド2024-25」花岡俊吾

本の感想「北海道キャンプ場&コテージガイド2024-25」花岡俊吾(北海道新聞社) 多分、以前に本書の過去の版を読んだことがある。これは記載情報が最新に更新されている。丁寧なガイド本で必要な情報が網羅されている。コロナ禍による旅行の規制もほぼなくな…

本の感想「不機嫌な英語たち」吉原真里

本の感想「不機嫌な英語たち」吉原真里(晶文社) 著者は1968年ニューヨーク生まれ。東京大学卒、米国ブラウン大学博士号取得で現在はハワイ大学の教授を務めている。この本はノンフィクションではないが、主人公は著者自身の名前で登場するし、著者の体験を…

本の感想「無間の鐘」高瀬乃一

本の感想「無間の鐘」高瀬乃一(講談社) 江戸を舞台にした怪奇譚で、ある僧が持つ無間の鐘をつくことでどんな願いでも叶うのだという。僧は出会った人にそのチャンスを与える。但し、その鐘をついた者は死後に無限地獄に落ち、もし子供がいれば現世で苦難の…

本の感想「愛しのゴキブリ探訪記」柳澤静麿

本の感想「愛しのゴキブリ探訪記」柳澤静麿(ベル出版) 著者は静岡県にある昆虫観察自然公園の職員でゴキブリストを自称する。この本はゴキブリの生態を詳しく紹介したものではなく、著者が昆虫観察や最終のために世界各地を探訪したルポルタージュである。…

本の感想「ジェンダー・クライム」天童荒太

本の感想「ジェンダー・クライム」天童荒太(文藝春秋) ミステリー作品でエンターテインメントとして楽しめる。主人公はベテランの警察官で柔道の達人でもある。ある捜査で優秀だがなにか一癖あって「合わない」感じの若手と組むことになった。事件は殺人で…

本の感想「貸本屋おせん」高瀬乃一

本の感想「貸本屋おせん」高瀬乃一(文藝春秋) 江戸の素人探偵が活躍する5話を収める。探偵役は貸本屋を営む女性で商売をしながら様々な情報を収集し推理を働かせ謎解きをする。子供の頃に母親は家を出ていき、父親は自殺してしまったので苦労して商売を立…

4月の山行 「坊主山 4月15日」

4月の山行 「坊主山 4月15日」 坊主山山頂からの眺め 昨年11月に初めて訪れた時は登山口までのアプローチで道を間違ってしまいました。1時間以上車でさまよった苦い経験があります。今回は道は分かっているので登山口まで無事にたどり着きました。林道の状況…

本の感想「数をかぞえるクマ サーフィンをするヤギ」ベリンダ・レシオ 中尾ゆかり訳

本の感想「数をかぞえるクマ サーフィンをするヤギ」ベリンダ・レシオ 中尾ゆかり訳(NHK出版) 本のサブタイトルは「動物の知性と感情をめぐる驚くべき物語」で、動物を使った様々な実験と観察を通してこのテーマを考察した記録である。学者たちは実に多彩…

本の感想「お隣の外国人」吉永みち子

本の感想「お隣の外国人」吉永みち子(平凡社) 昨年のデータによると日本で就労している外国人はおよそ200万人だという。そのうち国籍別で最も多いのはおよそ50万人のベトナム人だ。このルポではアジア、中東、中南米から来日している外国人たちを取材した…

本の感想「遺品整理屋は聞いた!遺品が語る真実」吉田太一

本の感想「遺品整理屋は聞いた!遺品が語る真実」吉田太一(青春新書) 著者は日本で初めて遺品整理業の会社を起業した。それから6年間の経験を書籍化して2008年にこの本が出版された。内容はいささか古いが、この仕事の内実は今も当時も大きな変化はないの…

本の感想「救命センター当直日誌」・「救命センター カンファレンス・ノート」浜辺祐一

本の感想「救命センター当直日誌」浜辺祐一(集英社)・「救命センター カンファレンス・ノート」浜辺祐一(集英社) 前者は2001年、後者は2021年の出版で著者はその間ずっと救命救急センターに医師として勤務し続けている。この本はそこで対応する様々な事…

本の感想「先生、ヒキガエルが目移りしてダンゴムシを食べられません!」小林朋道

本の感想「先生、ヒキガエルが目移りしてダンゴムシを食べられません!」小林朋道(築地書館) 外れのない「先生、シリーズ」の17巻目。書名になっているヒキガエルの捕食行動についての実験は以下の通り。ヒキガエルは広めの水槽で飼育し、餌容器として実験…

本の感想「正しき地図の裏側より」逢崎遊

本の感想「正しき地図の裏側より」逢崎遊(集英社) 主人公が高校生の時からその後の数年間を追った波乱のストーリーである。主人公は父親と二人暮らしだった。母親は主人公が幼い頃に離婚している。父親はトラックの運転手だったが仕事中に事故を起こしたこ…

本の感想「時間をかけて考える」養老孟司

本の感想「時間をかけて考える」養老孟司(毎日新聞出版) 初出は毎日新聞の書評欄2005年5月~2023年12月までのもの。新聞紙上で一度は読んだはずだがこうしてまとまったものを読むと記憶に残っているものはないものだ。3つのジャンルに分けてあり、1.意識…

本の感想「脳を開けても心はなかった」青山由利

本の感想「脳を開けても心はなかった」青山由利(築地書館) ヒトの意識とはどう定義することができるのかいまだに定見はない。しかしこの極めて難しい問題は以前から様々なアプローチがなされてきている。とりわけ、最近では生成AIの発達からAIが意識を持つ…

本の感想「星をつなぐ手 桜風堂ものがたり」村山早紀

本の感想「星をつなぐ手 桜風堂ものがたり」村山早紀(PHP研究所) 「桜風堂ものがたり」の続編で完結編。前の作品で主人公が働くことになった桜風堂という書店と主な登場人物のその後を描いている。街の書店が次々となくなっていくことがいわばこの物語の中…

本の感想「先生、モモンガがお尻でフクロウを脅しています?」小林朋道

本の感想「先生、モモンガがお尻でフクロウを脅しています?」小林朋道(築地書館) 「先生、シリーズ」の16巻目。書名のモモンガとフクロウの実験も面白いのだが、以前、モモンガの幼獣がフクロウの鳴き声に逃避行動をとることを明らかにした実験があった。…

本の感想「不思議カフェNEKOMIMI」村山早紀

本の感想「不思議カフェNEKOMIMI」村山早紀(小学館) 幽霊奇譚というか魔法使いファンタジーというか、そういうジャンルの物語。50代の女性が主人公で急に亡くなっるのだが、謎のランプから出現した魔ネコの計らいで死後魔法使いになるという設定になってい…

本の感想「1日1鉄!Ⅱ Part 2 2014-2024」中井精也

本の感想「1日1鉄!Ⅱ Part 2 2014-2024」中井精也 (Cloud Funding) この写真集はクラウド・ファンディングによって作成された。2014年4月には前作にあたる「1日1鉄!」が(株式会社インプレスジャパン)から発刊されている。当時は出版業界は今よりも活気が…

4月の山行「藻岩山」4月5日

4月の山行「藻岩山」4月5日 山頂からの眺め 今シーズン初の山行は藻岩山です。他にもいくつか候補がありましたがネット情報で調べても登山口までの雪の状況がよく分かりませんでした。藻岩山なら多くの人が入っていると考えて、ヤマップの活動日記を見てみま…

本の感想「桜風夢ものがたり」村山早紀

本の感想「桜風夢ものがたり」村山早紀(PHP研究所) 先に読んだ「桜風ものがたり」の続編だと思って読んだところ、こちらは続編でもありスピンオフ作品でもあるとのこと。続編は別にあって「星をつなぐ手」となっているので、次はそちらを読みたい。この作…

本の感想「先生、頭突きの中のヤギが尻尾で笑っています!」小林朋道

本の感想「先生、頭突きの中のヤギが尻尾で笑っています!」小林朋道(築地書館) 「先生、シリーズ」の15巻目。少し長くなるが「固定的活動パターン」について引用する。「固定的活動パターンというのは、『動作の始まりから終わりまで、そのパターンの発現…

本の感想「ナゾの境界駅探訪」鼠入昌史

本の感想「ナゾの境界駅探訪」鼠入昌史(イカロス出版) 境界には様々な種類があって、例えば米原はJR東海とJR西日本の境界、山崎は大阪府と京都府、神戸は東海道本線と山陽本線、敦賀は直流電化と交流電化などなど。その駅と周辺についての歴史や現在の様子…

本の感想「桜風堂ものがたり」村山早紀

本の感想「桜風堂ものがたり」村山早紀(PHP研究所) 書店員たちのヒューマン・ドラマで感動的な物語。初めて読む作家だったがこの作品は大当たりだった。出版は少し古くて2016年で本屋大賞にノミネートされたが大勝には選ばれなかったものらしい。何しろ主…

本の感想「繭の中の街」宇野碧

本の感想「繭の中の街」宇野碧(双葉社) 短編7作品を収める。恋愛小説と言ってもいいのかもしれないが、と言うよりは異世界との遭遇を描くというほうがよさそう。神戸の街を舞台にして人々の交錯を描く。読後感としてあまりスッキリした印象にはならない。…