2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

本の感想「動物たちは何をじゃべっているのか?」山極寿一・鈴木俊貴

本の感想「動物たちは何をじゃべっているのか?」山極寿一・鈴木俊貴(集英社) 山際氏と鈴木氏の対談。山際氏は言わずと知れたゴリラ研究の世界的な泰斗。鈴木氏はシジュウカラの鳴き声に意味があり、文法構造もあることを世界で初めて明らかにした気鋭の研…

本の感想「R・E・S・P・E・C・T」ブレイディ・みかこ

本の感想「R・E・S・P・E・C・T」ブレイディ・みかこ(筑摩書房) オリンピック開催前の2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件をモデルにした小説。ホームレス・シェルターに住んでいたシングル・マザーたちが地方自治体の予算削減のために退去を余儀なく…

本の感想「無人島、研究と冒険、半分半分」川上和人

本の感想「無人島、研究と冒険、半分半分」川上和人(東京書籍) 著者はNHK R1の人気番組「こども科学電話相談」で鳥の分野の回答者のひとりである。鳥と恐竜の分野は関連性が深いので、川上先生は恐竜についての質問にも補足回答をすることがよくあるし、恐…

本の感想「雫の街」乃南アサ

本の感想「雫の街」乃南アサ(新潮社) これはシリーズものの2作目になっている。前作は「家裁調査官・庵原かのん」。主人公が家裁調査官としての仕事を通して、様々な人間模様と対峙する。この本には7つのケースが収められている。例えば、失踪宣告、離婚、…

本の感想「日本宗教のクセ」内田樹、釈徹宗

本の感想「日本宗教のクセ」内田樹、釈徹宗 (ミシマ社) 内田氏と釈氏の自由闊達な対話を収めている。日本宗教のクセはひとつには「習合」的であることだの見解を述べている。そのことはさておいて、二人の博覧強記ぶりとあちこち思いがけない飛躍をする意…

北大苫小牧研究林 撮影

北大苫小牧研究林 撮影 9月25日に北大苫小牧研究林を初めて訪ねました。半月ほど前にこの施設を知り、撮影に出かけてみました。初めてなのでどのようなところなのかまずは下見という感じです。市街地から林道に入りほどなく駐車場になります。住宅地からの距…

本の感想「ドゥルガーの島」篠田節子

本の感想「ドゥルガーの島」篠田節子(新潮社) 趣味でダイビングをする主人公はインドネシアの小さな島で水中遺跡と思われる構造物を見つける。ゼネコンの社員として同国の遺跡の修復に関わった経験があり建築物を見る目は素人ではない。しかし、遺跡の専門…

9月の山行 羅臼岳

9月の山行 羅臼岳 羅臼岳には40年ほど前に初任地で同僚に誘われて登りました。その時は知床半島の硫黄山への縦走ルートだったので、羅臼平から東方向に折れました。従って羅臼岳は仰ぎ見ただけで登頂しませんでした。ずっと心残りだったのです。40年もほった…

本の感想「海とジイ」藤岡陽子

本の感想「海とジイ」藤岡陽子(小学館) 瀬戸内海の小さな島に縁のある人たちを描く中編3作を収めている。「海神」「夕凪」「波光」の3作品で、「夕凪」が一番よかった。東京で小さな個人医院を営む医師は70台半ばの年齢になり、誰にも打ち明けていないなが…

本の感想「百年の子」古内一絵

本の感想「百年の子」古内一絵(小学館) 小学館の社史を下敷きにして、同社と関わりのあった人たちの人間模様を織り込んだドラマチックな物語。昭和(戦中戦後の混乱期から)と令和(コロナ禍まで)とを交互に描き分けてストーリーが展開する。 主人公は大…

本の感想「あなたの日本語だいじょうぶ?」金田一秀穂

本の感想「あなたの日本語だいじょうぶ?」金田一秀穂(暮らしの手帖社) 日本語の様々な言い回しや最近の若者言葉などについて考察する楽しいエッセイ。普段何気なく使っている言葉に着いてあれこれツッコミを入れてみると、ハッとするような発見があるもの…

本の感想「人を動かすナラティブ」大治朋子

本の感想「人を動かすナラティブ」大治朋子(毎日新聞出版) 最初に紹介されるのは養老孟司氏とのインタビューである。養老氏のナラティブの解説は「ナラティブっていうのは、我々の脳がもっているほとんど唯一の形式じゃないかと思うんですね。(中略)過去…

本の感想「本棚には裏がある」酒井順子

本の感想「本棚には裏がある」酒井順子(毎日新聞出版) 週刊文春の「私の読書日記」に2014年10月から2022年4月に連載したもので酒井氏の担当した回をまとめたもの。文藝春秋で出版しないで毎日新聞出版から出ている。 読書案内なので紹介されている本の中に…

本の感想「水族館飼育員のキッカイな日常」なんかの菌

本の感想「水族館飼育員のキッカイな日常」なんかの菌(さくら舎) 著者は大学院の美術史専攻で卒業後に水族館に就職した。飼育員、社会教育係と経験した。その水族館は閉館になったので今はその職にはない。 この本はタイトル通りに水族館で働く人たちの日…

本の感想「国籍と遺書、兄への手紙」安田菜津紀

本の感想「国籍と遺書、兄への手紙」安田菜津紀 (ヘクレーカ) 著者は父親が在日コリアン2世だったことを知り、そのルーツをたどる取材を始めた。両親は著者の幼少期に離婚しており、その後は時々会う関係が続いたが中学2年の秋に自殺した。父親がコリアン2…

9月の山行 旭岳

9月の山行 旭岳 旭岳は30年ぐらい前に登っていますが、今回は同じコースを辿りました。7日早朝3:15自宅から出発しました。高速道路を走行しているうちに、だんだんと東の空が明るくなってきました。旭川鷹栖で高速を降りる頃にはすっかり夜が明けています。I…

本の感想「日本語が消滅する」山口仲美

本の感想「日本語が消滅する」山口仲美(幻冬舎新書) 本のカバーに「水村美苗さん、推薦!」とある。水村氏は2008年に「日本語が滅びるとき」(筑摩書房)を出しているが、この分野の書作では稀代の名著である。水村氏は1998年にフランスで開かれたシンポジ…

本の感想「養老先生、再び病院へ行く」養老孟司、中川恵一

本の感想「養老先生、再び病院へ行く」養老孟司、中川恵一(株式会社エクスナレッジ) 前著の「養老先生、病院へ行く」は養老氏が東大病院で中川氏の診療を受けて、心筋梗塞が見つかり入院加療した経緯を記した。そのあとどうなったかが本書である。病院機雷…

本の感想「エンド・オブ・ライフ」佐々涼子

本の感想「エンド・オブ・ライフ」佐々涼子(集英社インターナショナル) 自分自身の死は一度しか体験しないことだから、その時が来ても過去の経験知を生かすことはできない。しかし、職業として終末医療に関わってきた人たちなら、その経験知は自身の死に際…

本の感想「神秘」白石一文

本の感想「神秘」白石一文(毎日新聞社) 53歳で東京の大手出版社に勤務する主人公は会社の役員になったばかりで脾臓がんの診断を受ける。余命は1年の見立て。彼は5年前に離婚していて2人の娘は海外で生活しているので一人暮らしだった。急に病状が悪化する…

本の感想「美しい星」三島由紀夫

本の感想「美しい星」三島由紀夫(新潮文庫) 埼玉県の飯能市に住むある4人家族は各人が宇宙人であるという自覚を持つようになる。まず、夫が火星人を自認し、妻は木星人、長男は水星人、長女は火星人ということだ。こういう設定は星新一の作品にありそうだ…