本の感想「「不適切」ってなんだっけ」高橋源一郎

本の感想「「不適切」ってなんだっけ」高橋源一郎毎日新聞出版

 サンデー毎日に連載したエッセイをまとめたもので本署は3巻目である。初出が2021年10月から2024年3月まで。著者がNHK R1で担当している番組「飛ぶ教室」で取り上げた書籍や作家のこともしばしば登場している。映画の「プラン75」も番組でコメントしていたことがあったが、本書では「老人はみんな死ね」で言及されている。実は私もこの映画を見たのだが、著者と違った評価をもった。近未来の日本で福祉のコストが増大していく。75歳になるとそれ以上生きないことを選べるシステムが出来るというもの。テーマは興味深いのだが、映像が雑すぎて映画の作りとしては失敗作だと感じた。著者はそういう見方ではなく絶賛している。関連するテーマだが、「みんないつかは」では認知症について書いている。有吉佐和子の「恍惚の人」について解説する。この作品は随分若い時分に読んだ。若いなりに深く考えさせられた記憶がある。今、自分が高齢になって、もう一度この作品を読み直す時が来ているように思った。

 著者は私よりも数年高齢である。作家として様々なメディアでの発言をしているからでもあるのだろうが、ネット環境やITの積極的な利用をしていることには驚かされる。また、どちらかというと若い人向けの様々なコンテンツを好んでインプットしている。こういう能力には脱帽している。未だにスマートフォンを使っていないのは私との共通点である。