本の感想「錆びない生き方」五木寛之

本の感想「錆びない生き方」五木寛之毎日新聞出版

 サンデー毎日に連載したエッセイで誰かの言葉について著者が感想を述べるという形になっている。

 「夕方こそ一日でいちばんいい時間だ」カズオ・イシグロの「日の名残り」に出てくる台詞である。旅先で夕暮れ時に主人公が出会ったその土地の人と少し言葉を交わす。その人は引退した執事で、まだ現役の執事である主人公に人生を一日になぞらえてこのように言った。つまり、もう自分たちぐらいの年齢になったらゆっくり過ごす時間を持てばいいのだと。この場面はとても印象に残る好きなところだ。

 登場する面々は様々なジャンルにわたる。ひとつひとつのエッセイはごく短いのでやや物足りない感じもする。味わいのある内容だ。