本の感想「女の子たち風船爆弾をつくる」小林エリカ(文藝春秋)2024_05
昭和10年から戦中、戦後にいたるまでのある女性の回想記のような形で書かれた物語である。本書のタイトルにある風船爆弾の製造についてのエピソードも記してある。回想記だが最初のうちは日記のような書き方だと感じた。破線のようにある出来事から別の出来事へと飛び飛びに繋がっていきつつ、その都度、語り手の思ったことも記される。とりわけ戦争中にどんな体験をして世の中がどのように見えていたのかが本書の読みどころになっている。物語として何か筋の通っているわけではないのでストーリーの面白さはない。私的な歴史ルポルタージュといえばよさそうだ。戦争と人の暮らしとをリアルに描いている。