2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧
本の感想「エデンの東(上)(下)」John Steinbeck 土屋政雄 訳(早川書房)2005_05 原作 East of Eden は1952年の出版。先に読んだ「字幕屋に『、』はない」に本書が紹介されていた。土屋政雄の新訳ということで読むつもりになった。かなりの長編で上下巻…
本の感想「字幕屋に『、』はない」太田直子(イカロス出版)2013_09 2004年から「通訳・翻訳ジャーナル」に連載したエッセイをまとめたもの。字幕作成者の実態を紹介した楽しくもあり啓蒙的な内容である。字幕か吹き替えかを選べる場合には私は字幕で鑑賞す…
本の感想「照子と瑠衣」井上荒野(祥伝社)2023_05 主人公の二人は中学校の同級生で70歳になる。照子には夫がいて瑠衣は老人ホームに住んでいた。瑠衣はホームの暮らしが耐えがたくなり施設を出て照子に助けを求めた。照子は夫との暮らしに飽き飽きしていて…
本の感想「ゆうべのヒミツ」室井滋(小学館)2024_09 「女性セブン」と「夕刊フジ」に連載したエッセイをまとめたもの。気楽に読める内容で楽しい。日常に起きるあれこれがネタになっていて著者が身近な人のように感じる。こういうネタがよく続くものだと感…
本の感想「占」木内昇(新潮社)2020_01 占いや口寄せなどに関心を持ったり依存したりする人々の心理をテーマにした短編7作品を収める。個人的には占いなどに特別な関心はないのだが、こういう仕掛けを物語に組み入れることで面白くなることがある。本書はそ…
本の感想「女二人のニューギニア」有吉佐和子(朝日新聞社)1969_01 1968年に著者はニューギニアの山間奥地で研究している友人の人類学者に現地のフィールドワークに招かれた。小型飛行機を乗り継いで小さな空港に降り立つと、友人が迎えてくれた。リサーチ…
本の感想「ツミデミック」一穂ミチ(光文社)2023_11 短編6作品を収める。「祝福の歌」と「さざなみドライブ」の2作品が面白かった。「祝福の歌」は高校生の娘が妊娠したところから始まる。両親は産むことを反対するが本人は高校を止めることになったとして…
本の感想「耳に棲むもの」小川洋子(講談社)2024_10 短編5作品を収める。全体でも130頁ほどの分量なのですぐに読み終えてしまった。小川作品らしい不思議な印象が残るストーリーだった。最後に収められた「選鉱場とラッパ」は、秋祭りの夜店で見つけた輪投…
本の感想「日本語は死にかかっている」林望(NTT出版)2008_10 日本語の使い方についての啓蒙書。序章に置いて「日本語はどんどん醜くなっている」と警鐘を鳴らす。実例を多く示して、こういう言葉遣いはよくないと説く。なかなか厳しい内容であり、著者の提…
本の感想「禁猟区」石田衣良(集英社)2022_06 東京に住む夫婦のそれぞれの不倫関係を描く。主人公は妻で、先に夫の不倫に気付いた。その後、自身も劇団に属する10歳ほど若い役者と不倫関係になる。夫が不倫しているから自分もという気持ちもあった。こうい…
本の感想「帝国の弔砲」佐々木譲(文芸春秋)2021_02 ロシア革命前にロシア会陰回収に入植した日本人開拓農民の人生を描く。主人公は入植者の次男で1895年にロシアで生まれた。鉄道員を養成する学校を優秀な成績で卒業後には鉄道員として働く。やがて徴兵され…
本の感想「地面師たち」新庄耕(集英社)2019_12 土地売買の詐欺師たちを描く犯罪小説。この度、本書の続編が出たので再読した。いくつかの場面は読みながら思い出したものの、あらかた忘れていたので再読してよかった。緊迫感のある場面が読みどころで楽し…
本の感想「校閲記者も迷う日本語御表現」毎日新聞校閲センター(毎日新聞出版)2023_09 実例を挙げて徹底解説する。「肉が(柔らかい/軟らかい)」「イチゴが丁度いい(硬さ/固さ)」はどちらを使うのか?意味がまぎらわしいが似たような言い方の例としては…
本の感想「私はヤギになりたい」内澤旬子(山と渓谷社)2024_09 図書館の検索端末で「わたしはやぎになりたい」で入力すると「該当なし」の検索結果が出た。カウンター手予約の申し込みをして出口を出たところで、館員が追いかけて来て呼び止められた。「あ…
本の感想「シモネッタのアマルコルド」田丸久美子(NHK出版)2011_06 イタリア語通訳者の痛快で啓蒙的なエッセイで初出は主にNHKの語学講座のテキストに連載したものである。通訳者の力量と言うことで言えば、田丸氏は間違いなくトップ・クラスに入る。様々…
本の感想「校閲至極」毎日新聞校閲センター(毎日新聞出版)2023_08 「サンデー毎日」の連載コラムをまとめたもので、実際に校閲に当たっている担当者たちが書いた。校正と校閲は仕事の内容が異なっている。校正は主として誤字や言い回しの不適切を直すこと…
本の感想「ようやくカナダに行きまして」光浦靖子(文藝春秋)2024_09 2021年7月から始めたカナダ留学の1年目の体験を記している。主に語学学校がらみの事柄を気取らない日記のような形でまとめている。楽しい経験よりも何か切迫して困った経験の方が多いのは…
11月の山行 ピセナイ山 11月14日 ピセナイ山は日高の山々の展望台と言われているそうです。1年ぐらい前からずっと気になっていた山です。「北海道百名山」という古いガイド本にも載っていますが、最新の情報を得るのは「ヤマップの活動日記」です。それによ…
本の感想「無言の旅人」仙川環(幻冬舎文庫)2010_10 医療ミステリーで尊厳死をテーマにしている。交通事故で意識不明になった男性は尊厳死の要望書を残していた。家族や婚約者は男性がそういう意思を持っていたことを知らなかった。要望書に書かれているこ…
本の感想「日本語の「大疑問」」池上彰(講談社+α新書)2000_03 「言葉は生きているから変化するものであること。言葉の省略形や誤用が、やがて社会の多数派になって定着すること。私個人としては、言葉の合理的な変化は認めるが、できれば伝統を尊重し、論…
本の感想「うそコンシェルジュ」津村記久子(新潮社)2024_10 短編11作品を収める。表題作の「うそコンシェルジュ」は2作品あり、女性会社員が依頼を受けてウソを捜索する手伝いをするというもの。仮病とか親類の方ようなどのありふれたウソが使えない時に、…
本の感想「富士山」平野啓一郎(新潮社)2024_10 表題作「富士山」を含めて短編5作品を収める。「富士山」は30歳代の女性が主人公でマッピングアプリで知り合った男性と東京から浜名湖へ旅行に出かけるところから始まる。駅で待ち合わせて列車に乗るにあたり…
本の感想「言葉の誕生を科学する」小川洋子・岡ノ谷一夫(河出書房新社)2011_04 ヒトがどうやって言語を獲得し発達させたのかはよく分かっていないことが多いがそれだけに興味深いトピックである。個人の言語獲得においては次のようなことが分かっている。…
本の感想「なぜ、読解力が必要なのか?」池上彰(講談社+α新書)2020_11 読解力は広い意味で文章の読み方だけではなく、様々な資料の読み方や人との関係性の把握の仕方、さらには自分の考えをどのように表出するかということとも関わる。本書は「社会に出る…
本の感想「光炎の人(上)(下)」木内昇(角川書店)2016_08 明治末期に徳島県の山間部にあるタバコ農家の三男が主人公の生涯を描く。小学校の終了を待たずに生家を出て池田町のタバコ工場で働くことになった。工場で使われている機械に興味を持つようにな…
本の感想「エヴリシング・フロウズ」津村紀久子(文藝春秋)2014_08 中学3年生の学校生活を描く物語。高校受験を控えて学業や友人関係にも不安定なものを抱えている生徒たちがそれぞれの家庭事情や友人関係などに向き合って日々を過ごしている。何か大きな出…
本の感想「言語学クエスト ことばの世界をめぐる冒険」ことラボりょ(彩図社)2024_08 言語に関するさまざまな疑問を解説する。分野別に6章に分かれていてそれぞれに5~6のテーマが収められている。「子どもはどうやってことばの意味を学ぶの?」「なぜカ…
本の感想「日本語界隈」川添愛 ふかわりょう(ポプラ社)2024_10 日本語のあれこれについての楽しく興味深い対談。いくつか例をあげると、例えば「午前中」という言い方があるのに「午後中」はない。「冬将軍」があって「夏将軍」はない。昨今は温暖化が進ん…
本の感想「なんだか今日もダメみたい」竹中直人(筑摩書房)2024_06 竹中直人が出演した映画でとりわけ記憶に残っているのは「Shall we ダンス?」だ。主役ではなかったがうまい演技だと印象に残っている。作品がとても出来が良かったので彼の印象も際立って…
本の感想「笑い三年、泣き三月。」木内昇(文藝春秋)2011_09 戦後の混乱期に浅草の6区で身を寄せ合って暮らしていた芸能関係者たちの物語。上野駅に一人の芸人が降り立ったところから始まる。彼は地方で芸人として鳴かず飛ばずでやっていたのだが東京で成功…