本の感想「教誨」柚月裕子

教誨柚月裕子小学館

 死刑執行後に残された遺骨が遠縁の女性に引き取られた。女性と死刑囚との関りは子供の頃に一度会って二言三言言葉を交わしただけ。死刑囚は執行前に「約束は守ったよ。褒めて」と謎の言葉を残した。女性はほとんど何も知らない死刑囚がどんな人だったのかを調べ始めた。重苦しい設定の物語だが、疾走感のある展開でどんどんページが進んだ。謎解きの面白さもあるし、人の心理や地域社会の掟のようなものが複雑に絡み合った時に思いがけないデーモン性が発現してしまうことがあるのではないかという作者の洞察も見事なものだと思う。