本の感想「探してるものはそう遠くはないのかもしれない」他2冊 新井見枝香

「探してるものはそう遠くはないのかもしれない」新井見枝香(秀和システム

 2017年

「本屋の新井」新井見枝香(講談社)2018年

「この世界は思ったほどうまくいかないものみたいだ」新井見枝香(秀和システム

 2019年

 新井氏の作品を初めて読んでたいそう面白かったので、続けて別の作品を呼んでみることにした。図書館で検索用のタブレットを操作すると上記の3冊がヒットしていずれも「書架にあり貸し出し可能」となっていた。今日の運勢は大吉なのだろう。大急ぎで書架に向かうが、老人がやおら館内を疾走したら不審者扱いになりそうだから、速足で行く。「914ア」の書架で2冊見つかったが、「本屋の新井」がない。館内にウサイン・ボルトでもいて私の先を越したのだろうか?それとも運勢は中吉だったか?データを見直すともう1冊は「024ア」であった。書架の場所はカウンターにいる職員の死角になっているので今度は瞬間移動をはかって目指す書架へ。首尾よく3冊とも借りることができた。やはり運勢は大吉だったのだろう。

 「探してる」と「この世界」は同じシリーズで、「本屋」はシリーズものではない。いずれもかなり毒気の強いエッセイであり、わりと読み手を選ぶ作品のように思われる。自虐ネタが元になったエッセイと言ってしまえばそうなのかもしれないが、もしそう断じてしまえば作者は満足しないだろう。私もそうではないと思った。自虐物にしてはあまりにも高度に発展進化し過ぎている。「高練度の深化的自己分析から繰り出される概ね自虐、たいてい憤怒、時々やっかみ、稀に反省のエッセイ集」と私ならこんな風に言いたい。

 「この世界は」の終わりの方から2~3行引用する。「こうしてエッセイを書くことは、機嫌が悪いときこそ筆が走る。しあわせを噛みしめ、人に対して優しい気持ちが溢れて、世界の全てに感謝の気持ちが湧いているような気色の悪い状態の時、私は…クソおもしろくない文章を垂れ流す」

 「本屋」を読んで書店は多売できないと成り立たないビジネスだということも分かった。書店が店舗をたたむことが多いのも根本にはそういう原因がある。