本の感想「胃が合うふたり」千早茜 新井見枝香

「胃が合うふたり」千早茜 新井見枝香 (新潮社)

 二人の著者によるエッセイで、同じトピックについて新井氏が先に書いて、それを受けて千早氏が書くという仕立てを取っている。図書館の書架で本の背を見て面白そうなタイトルだと思い、千早氏が作者ということで手に取った。すると装丁が実におしゃれであり、面白い本だと確信した。ちなみに千早氏の作品は昨年出た「しろがねの葉」(新潮社)を読んだのが初めてだった。石見銀山で生きた女性の一代記で感動作品だった。新井氏の方は寡聞にして知らなかったのだが優れた文筆家だとこの度分かった次第。

 二人の関係性は非常に洗練されていて、どこか未来的な印象をもった。妙にベタベタしすぎることなく、互いを尊重し合っている。こういう関係をキープできる二人というのはなかなかいないものだろう。この先は踏み込まないラインというのがあって、それはその時々に変化するものなのだが、見事なステップ・ワークを使ってライン・オーバーを回避している。「胃が合っている」ことも関係性の維持には大いに貢献していて、食べることへの強いこだわりは他に類を見ない。私にはそういうこだわりがほとんどないのでこういう熱量にはただ圧倒される思いがする。すこぶる奇異な人を見ているような気さえする。だから文句なしで面白い。