本の感想「老いてもいい、病んでもいい」香山リカ

「老いてもいい、病んでもいい」香山リカ新日本出版社

 著者は2022年から北海道むかわ町穂別の診療所で医師としての勤務を始めた。その動機の一つには中村哲氏の「聴診器をスコップに持ち替える」という言葉があったのだという。香山氏は「大学での教鞭や東京のメディアでのペンを聴診器に持ち替えようとした」のだそうだ。臨床として香山氏は長年精神科の医師であった。穂別の診療所では訪れる患者の症状に応じて内科やその他の科にも対応する。病状を診るというよりも患者という人を診ることが日々の仕事であり、それは東京での精神科としてのキャリアとは全く異なった医療提供になっている。この診療所での仕事からは多くの気付きがあり、このエッセイにもそういうことが記されている。

 老いることや、病むことは抗うことが解決方ではない。むしろ、馴染んでいくことがより全うな解決法なのではないか。そういう目先の転換があった方がひいてはQOLの向上にも繋がっていくのではないだろうか。