本の感想「四日間家族」川瀬七緒

「四日間家族」川瀬七緒 (角川書店

 ネットで知り合った自殺志願者の4人は、おんぼろ車で山中の道に入っていく。車のドアを目張りして練炭を燃やそうという計画。その時、1台の車がやって来た。気付かれないように車内灯を消して息をひそめる4人は、車から降りた女が赤子を捨てていくのを目撃した。4人は自殺計画を中断して捨てられた赤子を救出することにした。

 という、出だしで始まるストーリーだが、この設定には随分無理があって現実味はさらさらない。確かにネットで知り合った人たちが一緒に自殺する事件は何件があったから、そこまでは現実感がなくはないが、赤子を捨てる現場に遭遇するというのは無理筋だ。ここで白けたストーリーだと思ってしまえばそれまでなのだけれど、読み進んでいくとこの程度の無理筋は気にならなくなってしまう。少しもよどみのないスピーディな展開に引き込まれた。エンターテインメント小説というのはこういう疾走感が命であって、それさえあれば、大抵のことはどうでもよくなってしまうものだ。タイトルにある通り、この小説は4日間の出来事で、次々と展開する場面の連続はまさにページ・ターナーに他ならない。