本の感想「ニュースなカラス、観察奮闘記」樋口広芳

「ニュースなカラス、観察奮闘記」樋口広芳(文化統合出版)

 書名の通り、カラスの観察研究の記録・考察である。一般向けなので読みやすい。奮闘記とあるのは、例えば、必要に応じて路上からカラスを長時間観察することがあるのだが、朝から暗くなるまでの長丁場で奮闘することさえあるのだという。

 カラスの賢い行動というのはしばしばニュースに取り上げられたりするので、ある程度のことは一般にも知られている。研究者目線で生態を考察していくと色々なことが分かってくる。こういうことはここまで分かったのか、としばしば感心した。例えば、野外に置かれている手洗い用の固形石鹸や寺社に備えられたロウソクがカラスによって持ち去られるのは何故か?これは謎が解明された。公園などにある水飲み場の蛇口をひねって水を出して飲んだり、水浴びに使ったりできる個体もいるが、それはかなり高度な技であり、他の個体はそれを見ていても真似してできるようにはならない。こういったカラス事情が非常に興味深く語られている。カラスという身近なトリだからよく観察できるということもあり、著者は一般からの情報も求めている。ひょっとするとこの本の読者からの通報でさらに新たな謎解きが生まれるのかもしれない。ちなみに、拙宅の近所に飛来するカラスは他のカラスと違ってなんだか掠れたような鳴き声の個体がいる。どういう事情なのだろう?単に発声器官の調子がわるいのだろうか?