本の感想「ドゥルガーの島」篠田節子

本の感想「ドゥルガーの島」篠田節子(新潮社)

 趣味でダイビングをする主人公はインドネシアの小さな島で水中遺跡と思われる構造物を見つける。ゼネコンの社員として同国の遺跡の修復に関わった経験があり建築物を見る目は素人ではない。しかし、遺跡の専門家ではないので、本物の遺跡なのか自然の創り出した地形なのかは断定できない。そこで考古学者と文化人類学者の協力を得て現地を再訪する。その島は火山島で古い因習が残り、呪術者が集落の有力者でもある。様々な禁忌や不思議な風習もあり調査はスムーズには進まない。また、火山活動も活発化して当局からは退去の勧告も出される。

 主人公の大望は遺跡が本物として認められて適正に保存されることだが、中盤以降の展開にいささかのもたつきを感じる。舞台になっているインドネシアの島は実在しないが、遺跡の保存や現地の人たちの固有の文化の継承と観光資本による開発という利害対立はどこにでも起こることである。火山活動によるパニックも加わってストーリーは混乱を増していく中で、主人公は新たに進むべき道を模索し始める。