本の感想「安曇野の白井庭」丸山健二

本の感想「安曇野の白井庭」丸山健二(新潮社)

 三浦しをん「本屋さんで待ちあわせ」で紹介の本。安曇野の350坪の土地に自宅を持ち、その広い庭を自力で造成するという記録。園芸の素人が取り組むにはかなり難しいタスクであるが、著者はほとんど独学で試行錯誤していく。その労力は生易しいものではなくて、それを文章化するとこの本ができた。奮闘記であり自画自賛記ともいえるように思った。

 庭に樹や花壇向きの草花などを植えて思い通りに管理するというのはそう簡単なことではない。拙宅も小さな庭があるので、住宅に入居後にはせっせと樹や草花を植えてみた。仮に何も植えなくてもどこからか植物の種が飛んでくるから、雑草が繁茂するし、自分で植えていない花が咲いたりもする。そういう類の植物を管理するだけでもなかなかの手間暇がかかるものだ。樹木の場合は年数が経つと想像以上に大きく成長してしまう。枝切りも必要で、作業をするとちょっとした林業をやっているかのような気になる。落ち葉の問題もある。拙宅では特に桜の落ち葉の片付が大変だ。隣の庭にも落ちてしまうので、ステルス侵入しては拾い集めてくる。ピーク時には一日に複数回やらねばならない。

 著者の場合はなにしろ庭の面積が広大であり、植える樹木の数も度を越えて多い。小説を書くという本業以外の時間はあらかた庭を丹精することに費やされる。初めは素人だった技能レベルや道具類の扱いにも熟達してくると、造園の理想形はどんどんとレベルが高くなる。その打ち込み方に引き込まれる。