本の感想「先生、オサムシが研究室を掃除しています!」小林朋道

本の感想「先生、オサムシが研究室を掃除しています!」小林朋道(築地書館

 「先生、シリーズ」の12巻目。毎度、驚かされることが記してある。ひとつだけ紹介する。ニホンモモンガに取りついているノミについて調べた。まず、その研究対象に驚く。著者はモモンガに関しては様々な研究をしているが、取りつくノミまで調べるのだから堂に入ったものだ。ノミを捕獲して飼育容器で飼う。容器の中にはモモンガの体毛を入れてあるので、ノミはその中に潜り込む。比較のためにいれてあるヒメネズミの体毛には潜り込まない。この種類のノミはニホンモモンガとムササビに限定して寄生するという論文が発表されている。ノミはモモンガ以外の動物に取りついたとしたらどうなるのかというと、死んでしまう。モモンガノミは進化の結果として、特定の動物(この場合はモモンガとムササビ)に寄生するようになっている寄生動物(この場合はモモンガノミ)では、寄生動物の諸形態(体形や血を吸う口部構造)は寄生相手独自の体毛や皮膚や血管の特性にうまく合うようにできていると考えられるからだ、と解説する。私たちはなかなかこういうレベルまで考えることはないものだろう。関連してシカとイノシシに取りつくダニについても実験を試みている。ダニの場合はシカでもイノシシでも区別なく取りつくという結果になった。同じ種類のダニがシカにもイノシシにも取りついていたということ。たいそう深い知見である。