本の感想「妻から哲学」土屋賢二

本の感想「妻から哲学」土屋賢二文藝春秋

 週刊文春の連載エッセイのベスト・セレクション。内容ごとに5つのジャンルに分類してある。著者は退職後はご夫妻で神戸の老人ホームで生活されている。勤務したお茶の水女子大での最終講義のことを記してある。特別なイベントは企画しなかったという。色々と面倒や不都合を避けたかったと述べているが、一番の理由は普段通りの講義を淡々と行いたかったということと推測された。講義をすることが楽しかったので、わざわざ特別のイベント化をすることで、せっかくの最後の授業をいつもと違ったものにはしたくなかったのだろう。一つ前の講義では「哲学がいかに面白いか、なぜ最高の娯楽になるかを語った」ということで、最終講義では「最初から最後まで雑談で通した。結婚や進路についてとりとめもなく話した」のだという。この最終講義を受けたのは30名ほどのいつも通りの履修者だった。その学生たちにとってもイベント的な最終講義でなくてよかったと思う。