本の感想「静浄島」川﨑秋子(双葉社)

 昭和20年代の終わりごろに礼文島エキノコックスが流行した。その10年後ぐらいには根室地方でも。その対策にあたった道の調査官を語り手にした小説である。礼文島で実行された対策は寄生虫の宿主となる動物を徹底駆除することで、キツネや野犬のみならずペットのイヌやネコに至るまで殺処分が行われた。対策に担当した道の官吏たちや島の行政官たちの葛藤や島民との軋轢、戸惑いや苦悩が描かれる。北海道の現代史の一幕をこの小説で初めて知った。一読の価値があると思った。