本の感想「ティラノサウルス解体新書」小林快次

ティラノサウルス解体新書」小林快次(講談社

 本の「はじめに」で、NHK R1の人気番組「子ども科学電話相談」のエピソードが記してある。私はこの番組で著者を知って、以来、敬愛の意を込めて著者は「小林先生」だ。恐竜についての本をたまに読むようになったのも小林先生のおかげである。

 この本で初めて知ったことはいくつもあるが、例えば次のようなこと。

(1)ティラノサウルスの化石は北米大陸以外では見つかっていないのだという。また全身骨格に近い化石は世界にごく僅かしかない。これから状態の良い化石が見つかればさらに多くのことが研究されていく余地がある。

(2)ティラノサウルスは恐竜絶滅の直前の僅かな期間しか存在していなかったということにも驚かされた。恐竜と言えばティラノサウルスという印象を持っていたのだったが、最強の恐竜に進化したものの生存した期間は長くはなかった。個体の寿命も意外に短くてせいぜい40年ぐらいだったという。

(3)ティラノサウルスは走れたかどうかも諸説ある。例えば、体重と脚の筋肉量からそのことが分かるのだという。その考察からすると走れなかったとされていて、歩行速度は最大でも18km/hと見積もられた。その他の説もあって、仮に走れたとしても29km/hが最速だろうとされている。

 以上、3点あげたがこの他にも興味深い内容が満載されている。恐竜研究の第1義的な資料は化石しかないわけだけれども、さまざまなアプローチによって次々と新たな知見が解明されてきていることに深い感銘を受けた。