本の感想「老い方死に方」養老孟司

本の感想「老い方死に方」養老孟司PHP新書

 養老氏と4人の識者たちとの対談をまとめたもの。対談相手は登場順に南直哉(恐山菩提寺院代)、小林武彦(東京大学定量生命科学研究所教授)、藻谷浩介(日本総合研究所調査部主席研究員)、阿川佐和子(作家・エッセイスト)。それぞれ、宗教、生命学、経済学、介護と看取りについての堅苦しくない対話で読みやすい。

 「死を受容する方法、生き方」として南氏はこう語る。「90歳を超えること、ですね。それは実際に見てきて、そう思うからです。95歳までいけばもう確実ですね。もう考えるのが面倒くさくなるのか、あんまりくよくよしなくなるんじゃないかと」とのこと。また、小林氏の死生観は「私も老いや死を研究するなかで、「幸せってなんだろう」とよく考えるようになりました。メタバースの話ではないですが、不老不死を獲得することが幸せにつながるとは思えません。また昆虫のような没個性的な生き方も違います。やはり個性豊かに人らしく生き、最後は惜しまれて「利他的に」死ぬことが幸せにつながると思っています。

 というふうに示唆に富む言葉が随所に出てきて読んでいてありがたい気持ちになった。