本の感想「満点のゴール」

本の感想「満点のゴール」藤岡陽子(小学館

 「満点のゴール」とは、「その人にとって満足できる死」の言い換えである。僻地医療の現場で、独居する老人たちがどのように死を迎えようとするかを物語の中心に据えている。死に向かう人たちにはそれぞれの背景や意思がある。医療者はそれをどのように支えるかが仕事になっている。何が何でも延命処置を施すということにはならない。その人に相応しいケアやサポートのやり方があって、いわばオーダーメイドでやっていくことになる。すべての人が「満点のゴール」を達成できるとは限らないが、それになるべく近いゴールを目指すことは諦めるべきではない。

 東京で夫と一人息子と暮らしていた女性が突然離婚を求められた。夫には再婚したい女性がいて一緒に暮らすと言って家を出る。女性は息子を連れて京都の僻地にある実家へ向かった。子供が夏休みの間は実家で滞在するつもりだった。その集落には病院が1件しかなく、女性の母親はかつてその病院で亡くなっていた。女性は看護師の資格を取っていたが、母親が亡くなった時のある事情で看護師として就職せず、故郷を去り東京で暮らしていたのだった。病院には中堅の男性医師がいて僻地医療に貢献しているのだが、何かの事情があるようだと女性は気付くようになった。女性は経済的な事情もあり、実務経験がないままに新米の看護師としてその病院で働くことになる。女性も死にゆく人たちの現場に立ち会いながら自身の将来に方向性を探っていく。