本の感想「安野光雅作品集」大矢鞆音 監修

本の感想「安野光雅作品集」大矢鞆音 監修 (東京美術

 A4版の作品集で見開きがA3になるから大判で鑑賞できる。しかし、本の「のど」が作品を分割してしまうことになるのが残念に思った。それでも安野作品の魅力は十分に楽しめる。初期のころから晩年の作品まで広くセレクトされている。「旅の絵本」などで描かれた海外の風景や、だまし絵のような不思議な作品や、文学作品をネタにしたものなどなど安野氏の仕事がいかに多岐にわたっていたかを示している。

 誰にでもお気に入りの絵画作品はあるものだろうが、安野作品を見て気に入らないと言う人はとても少ないのではないかと思う。もし、どうしても自分の一番好きな絵をひとつだけ選べと言われたとしたら、安野作品のどれかになるのかもしれない。絵の技法のことはまったく分からないけれども、あり余るほどの豊富なアイデアと比類なき手技によってしか生み出されることのない作品である。どのページを開いても何度でも見たくなるものばかりだ。