本の感想「限界国家」楡周平

本の感想「限界国家」楡周平双葉社

 ジャンルで言えば「経済小説」ということになるのだろう。日本の近未来を様々な観点からこうなるであろうと予想している。一番のベースになっているのは少子高齢化と人口の減少。この傾向は根拠がはっきりした数値なので、いきなり出生率が大きく変わることがなければ、その通りになることは確実である。現政権も遅ればせながらの「異次元の改革」に取り組んでいるようだけれども、政策そのものが現実から乖離した異次元的のようにも見える。

 労働人口が減ることと、IT化や様々なイノベーションによる労働人口の削減とがうまくマッチするかどうかが肝になりそうだ。例えば、トラック輸送を担うドライバーの不足が「2024年問題」と言われているが、では自動運転がそれに間に合うスピードで実現されるかと言うと無理だろう。自動運転が普及するまでのつなぎをどうにかするしかない。

 大局的には右肩上がりの経済成長社会を見直す必要があるのだろう。とりわけIT技術の目まぐるしい進化の中では、普段の生活が過剰便利になってきている。利便性は過剰である必要はないし、多少利便性が損なわれたとしても気にならずに我慢できることもあるだろう。技術革新も必要だが、幸福度を測る物差しの見直しも不可欠だ。