本の感想「陽気なお葬式」リュドミラ・ウリツカヤ 名倉有里 訳 (新潮社)
ロシア文学には馴染みが薄くて、「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」ぐらいしか読んでいない。現代作家の作品をいくつか読んでみることにした。3冊借りてきていて、この作品から読んでみた。
1991年猛暑の夏のニューヨーク、ロシア移民たちのコミュニティという場面設定で、主人公は重い病気で死期がせまりつつある画家。彼を取り巻く様々な背景をもつ人々と主人公との関りを描いている。次第に病状が進行していく様子と葬式と埋葬のセレモニーまで続いている。主人公と周囲の人たちとの関係はそれぞれに独自なものであり、主人公との会話でそれぞれの人物の事情が明らかにされていく。死期が近いことを知っている主人公は自身の死後に人々ができるだけ哀しみを抑えられるように望んでいるのだが、そのことは具体的な言葉としては伝えられておらず、秘密裏に一人の人物に託される。
この作品の理解のためには場面と人物の設定がポイントになっているように思える。すなわち1991年夏、ニューヨーク、ロシア人コミュニティ、事情通の読者ならばこの設定から一定のイメージを思い浮かべることができるのだろう。私はその辺りの知識が欠如しているので、作品の理解が十分にできずピンとくるものがなかった。だからちょっと残念な読後感が残った。