本の感想「超新星紀元」劉慈欣  大森望、光吉さくら、ワン・チャイ 訳

本の感想「超新星紀元」劉慈欣  大森望、光吉さくら、ワン・チャイ 訳 (早川書房) 

 劉慈欣の「三体」はスケールの大きな長編でヒット作品になった。その後、この作品以前に書かれた作品がいくつか翻訳されているが、いずれも「三体」の完成度には及ばないと思った。この作品もその類のもので、初めての長編作品だという。

 超新星爆発により、地球に大量の放射線が降って来た。未知の高エネルギーには染色体を破壊する力がある。ただし、再生力が強い12歳以下の子供には影響がなく、大人が死滅した社会ができあがる。随分思い切った無理筋の設定だが、この辺りは無駄に苦しい説明をしていないのがよい。作者の意図は、大人のいない社会がどうなっていくかを想像していくことにある。中国を舞台にして進んでいた物語が後半に入って、他国とのつながりが出来てくるあたりからはストーリーが混迷する。ちょっとそれはないだろうという感じがしてくる。それでもストーリーは読みやすくどんどん最後まで読めるだけの吸引力は持っていると思った。