本の感想「クマにあったらどうするか」姉崎等

本の感想「クマにあったらどうするか」姉崎等 (木楽舎

 姉崎氏はアイヌ民族最後の狩人で、22歳から単独でクマ撃ちを始め、25年間で40頭、集団猟を含めると60頭を仕留めた。この道の達人であり、道内のクマの生態や行動について知悉している。1990年に春クマ猟禁止をきっかけにしてクマ猟を止めた。この本は姉崎氏にインタビューする形で書かれている。聞き書きは片山龍峯氏が担当した。

 姉崎氏が実際に体験したクマ猟のことだけでなく、動物行動学的な見地からの豊富な知識も披歴されている。私たちがクマにあった時に最優先なのは安全に被害を避けることだが、漁師としてはクマを仕留める目的もある。自ずと対処の仕方は異なってくる。長い漁師生活の間に、危険な状況にも遭遇しているが、身の安全は確保された。そのための知識と技量があったからだ。

 昨今、住宅地へのクマの出没が増えて問題化しているが、クマの立場になって考えてみることが必要なのだろう。姉崎氏によれば強い個体はヒトの生活圏には寄ってこないのだという。山奥でエサを確保して生きていくことができるからだ。山でのエサを十分に確保できない個体が「人慣れ」して人の生活圏に侵入してくる。ヒトを捕食した経験を持つ個体はヒトがエサになることを学習してしまっているので、駆除するしかないとのこと。道東で家畜を襲っているOSO18のような個体がいるが、そういう個体はヒトと遭遇することを徹底的に避けているのでヒトを襲うことはないとのこと。