本の感想「海外で恥をかかない世界の新常識」池上彰

本の感想「海外で恥をかかない世界の新常識」池上彰集英社

 池上氏が実際に訪れた世界各地の街についてその歴史や地理を解説している。全部で44都市とりあげられている。まずは博覧強記ぶりに圧倒される。学生の頃に地理はまずまず得意だったが、歴史は日本史も世界史もまったくおぼつかなくてテストの点数も低迷していた。このような本を高校生ぐらいの時に繰り返して読んでいたら歴史のことももっとよく分かったに違いない。今はもう読んでも知識が定着することはなくなったのでザルで水をすくっているような読み方しかできないけれども、「なるほど、これはこういうことだったのか」と思うところが満載だった。

 ひとつだけ例をあげる。シンガポールの独立について。もともとマレーシア連邦の一部だったのが1965年に分離独立をはたした。独立と言うと勝ち取るものというイメージがあるが、シンガポールの場合はそうではなかった。マレーシア連邦から追放されてしまったのだ。そもそもマレーシア連邦はイギリスの自自領で1963年に独立。シンガポールはイギリス統治時代に流入した中国人とその子孫が人口の半分を占めていてマレー人との対立が絶えなかった。ということで「追放」されて「分離独立」せざるを得なかったということ。初代首相となったリー・クアンユーは「私にとって今は苦渋の時です」と語り独立を宣言したという。

 こういったことを学校の授業で習ったのかどうか全く記憶がないけれど、歴史の中に興味深いことはあるものだ。

 初出は2010年2月から「BAILA」に連載したもので少し内容が古くなっているものの、各都市での池上氏目線での観光スポットも紹介されていて楽しい。