本の感想「幽玄F」佐藤究

本の感想「幽玄F」佐藤究(河出書房新社

 幼い頃から飛行機が好きだった主人公が航空自衛官になり、念願だった戦闘機のパイロットになった。優秀なパイロットとして一目置かれるようになったが、米国での訓練中に操縦時に音速を越えると身体の不調を感じるようになった。原因は分からないが最新鋭の戦闘機に搭乗できなくなったことがきっかけで自衛隊を止める。その後は、東南アジアの小さな会社で観光飛行機のパイロットとして働くことになった。タイからバングラデシュに移り住み、やがてそこで思いもよらないものを見つけることになった。 

 著者の前作の一つに「テスカトリポカ」がある。ストーリーは畳みかけるような緊張感が途切れなくて読みごたえがあった。バイオレンス・サスペンスのジャンルに入ると思うが、バイオレンスの激しさは群を抜いていたと思った。この作品はそういうことはなくて慄くことなく読める。入念な取材の成果が全編に反映されている作品である。