本の感想「葬送のお仕事」井上理津子

本の感想「葬送のお仕事」井上理津子 (解放出版社

 『シリーズお仕事探検隊』の1冊で、このシリーズは中高生向きで進路ガイダンスのような位置づけになっている。退職した身にはそういう目的ではマッチしていないのだが、職業紹介というジャンルはなかなか興味深いものだ。読みどころは第3部で紹介されている葬送の仕事についている人たちへの取材である。やはり当事者の声というのは伝える力が大きい。この仕事を選んだ動機の中には、近親者の葬式で葬儀社の人たちに仕事ぶりを見て感銘を受けたというケースもある。セレモニーの様式美にも心に響いたといも言う。かつては葬送に関わる仕事には「穢れ」があるとか、「ぼったくり商法」だとか言われたことがあった。「穢れ」については全くの偏見だが、「ぼったくり」の方は確かにそういう悪徳業者がいたことも事実である。今は、葬送の仕事は、「総合セレモニー・ビジネス」として機能していることも多い。同じ業者が結婚式も取り扱っていることもある。だから偏見はなくなりつつあるのだが、それでも現場においては「格下の仕事」とか「なり手が少ない業種」と見られることも皆無ではない。コロナ禍にあって、葬送ビジネスも転換点を迎えた。いわゆる直葬が増え、かつてのような大人数での葬儀は回避される傾向がある。より個性的な葬送の在り方が増えてきている。ビジネスとしては多様なニーズにどう応えていくかがこれからの課題だ。