本の感想「メイド・イン京都」藤岡陽子

本の感想「メイド・イン京都」藤岡陽子(朝日新聞出版)

 主人公の女性は美大を卒業して東京のインテリア関係の会社で働いていた。仕事絡みで知り合った銀行員と婚約して退職。婚約者が家業を継ぐために実家に戻るのと一緒に京都での生活が始まった。当面、婚約者の家族と同居していたが、諸般の事情により市内の賃貸物件で暮らすことになった。諸般の事情の中身は色々で、家業のビジネスにまつわる京都独自のしきたりだったり、婚約者の家族との馴染めなさだったした。

 あるきっかけで、美大時代に顔見知りだった同窓生が滋賀県の田舎の方で陶芸作家として暮らしていることを知り、訪ねて行った。大学卒業10数年ぶりの再会となった。その人物から紹介されたビジネス・コンサルタントに勧められて、主人公はTシャツに刺繡を入れたオリジナル・デザインを売り出すことになった。思いがけず掴んだビジネス・チャンスに戸惑いと期待が交錯する。婚約者とその家族との距離感も揺れ動く。京都風の独特の文化にも手こずったり、人を信頼して失敗することもある。登場人物それぞれの浮き沈み、成功もあり、挫折もあり、間延びしたところが少しもないストーリーを堪能できた。