本の感想「天はあおあお野はひろびろ」池澤夏樹 写真・水越武

本の感想「天はあおあお野はひろびろ」池澤夏樹 写真・水越武北海道新聞社)

 本の副題は「池澤夏樹の北海道」となっていて、北海道新聞に連載したエッセイを中心にしてまとめたものである。著者と北海道の関りをテーマにした文が多く収められているが、その他のテーマもある。2022年の秋まで13年間札幌に住んでいたが安曇野に引っ越した。札幌に住む前は5年間フランスに、さらにその前は5年間沖縄でくらしていた。自身が述べているが住む場所を変えることが習いになっているのだという。札幌暮らしがながかったのは、帯広で生まれて小学校に入る前まで暮らしていたこともあり、北海道には特別に愛着があるということもあった。

 池澤氏のエッセイは読んでいて気持ちがよい。なるほどと思わされたり、そういう見方もあったかと考えさせられる。とにもかくにも文章自体が上手い。ここしばらく新刊の小説を読んでいないが、何かの媒体に連載しているものがあるのだろうか?ぜひともまた新作を楽しみたいと期待している。

 どういう縁があったのか分からないが、水越武氏の写真が30点ぐらい収めてある。全て道内で撮影されたモノクロの作品である。これもまた見事なものだ。