本の感想「神様のカルテ 0」夏川草介

本の感想「神様のカルテ 0」夏川草介小学館)2015_03

 このシリーズの「3」の後に出版されたものだが、ストーリーを時系列に並べると、本書「神様のカルテ0」「神様のカルテ」「神様のカルテ2」「神様のカルテ3」「新章神様のカルテ」となる。本書は主人公が医学部の6年生から始まり、卒業して松も阻止内の中核病院に勤務し始めたところまでになっている。主人公が勤務する前の病院の様子やさまざまな事情も紹介されている。夏川草介氏はこの夏初めて知った作家だが、最初に読んだのは夏川氏の翻訳本だった。とても読み易い翻訳であり小説の著作もあると知って連続して読むことになった。なかでもこのシリーズは傑出して読みごたえがあった。漱石文体模写による上品でユーモアのある文体を駆使しながら、医療現場を舞台にして、時に深刻なヒューマンドラマ、時に軽妙な人間関係や恋愛関係などをバランスよく構成している。シリーズの最初の作品である「神様のカルテ」は2009年の出版で2010年に本屋大賞2位となり150万部も売れたという。書評や新聞広告が出たはずだが、なぜこの作品のことをキャッチできずにいたのか解せない。なにはともあれこのシリーズに出合えたことは慶事であった。出版から年数が経っているので、図書館で全巻を貸し出しの順番待ちをせずに次々と読むことができたのも幸いだった。出版ごとに読んでいたとすれば次の巻を待ちきれないストレスがかかったことだろう。