本の感想「マザー」乃南アサ

本の感想「マザー」乃南アサ講談社)2014_08

 様々な状況の母親をテーマにしている短編5作品を収める。一緒に暮らしていた家族の死後にすっかり変わった母親とか、夫の定年を機に離婚した母親など、5人の母親の生き方を描く。1作目の「セメタリー」は子育ても介護も献身的に行ってきた母親が独立した子供たちにそれまでの自身の人生を振り返って語る。ラストではある秘密が明らかになる。5作品とも物語性が強く出ていて引き込まれる。人が心で思うことは場合によっては表に出さずにいるだけということがしばしばあるのではないだろうか。