本の感想「三面記事小説」角田光代

本の感想「三面記事小説」角田光代文藝春秋)2007_09

 短編6作品を収める。新聞に載った事件を元にして創作したミステリー的なストーリーである。ある殺人事件の容疑者は26年間自宅の床下に遺体を隠していた。またある容疑者は介護離職の後に母親のケアに従事するが収入面でも介護の面でも行き詰ってしまう。何らかの原因で追い詰められた状況で起こる事件は起きてしまってから初めて報道されて我々の知るところとなることが少なくない。どこかの段階でなんらかの支援と出会うことができたらこうはならなかっただろうと思わされることがあるものだ。自分自身にもどんな形かで追い詰められることがないとは言えない。ミステリーとして楽しむだけではない作品だと思う。