本の感想「クマとともに」坪田敏男、佐藤善和、山﨑晃司(東京大学出版会)2026_01
ここ数年来クマの被害のニュースは途切れることがなかったが、2025年はとりわけクマ関係の報道が多かった。いわゆるアーバンベアによるこれまでにないような行動が増えてきているのだが、本書はその点もカバーしつつ、ホッキョクグマ、ヒグマ、ツキノワグマの現状と未来を解説する専門的な内容の本だ。中でも、一番気になるのは北海道のヒグマについてだ。この部分は酪農学園大学教授の佐藤氏が執筆を担当している。新聞やテレビなどのメディアで伝えられていることがより詳しく解説されており、クマと我々の今後についての提言もなされている。少し前にNHKの道内向けローカル番組で見たのだが、佐藤教授の研究室の学生たちはクマ研究の知見を活かした就職口が見つかりにくいのだという。行政による野生動物管理予算が小さすぎて専門職を置くだけの余裕がないのだろう。他国では公務員レンジャーやクマ管理のための専門職が用意されているケースがある。そういう仕組みを整備・強化していく必要性があると思う。野生動物の基礎研究には継続性が不可欠だからもしもいったん弱体化してしまうと回復はほぼ不可能になってしまう。大学教育の在り方についての政府方針は「今すぐ金儲けにつながる領域には金を出す」となってしまった。アカデミズムの破壊に他ならない愚策を転換する必要がある。