本の感想「五十八歳、山の家で猫と暮らす」「六十一歳、免許をとって山暮らし」平野恵理子

本の感想「五十八歳、山の家で猫と暮らす」「六十一歳、免許をとって山暮らし」平野恵理子(亜紀書房

 本のタイトルがそのまま内容を表している。山の家とあるが、JR小淵沢駅まで徒歩40分ということなので、田舎暮らしという方が実態に合っている。この山の家は著者の両親が別荘として購入したものなので、子供の頃からここで過ごすことが度々あったのだという。両親が他界した後に、1年間通して住んでみようと思い立って、横浜の自宅を離れてここに「引っ越し」した。都会に暮らす人がリタイヤ後に地方に移住を企てて、失敗する例もあるが、著者の場合にはそういう状況とは違っていて、この地との長い関りがあった。

 とはいうものの、ここには都会暮らしとは違った様々な不便はあるし、自然環境もかなり異なる。そういう中で、物書きをしたり、絵を描いたりする仕事をしながら、1年のつもりが延長されていく。田舎暮らしの必需品の自家用車を使えるようにと、61歳で運転免許も取得する。必要なスキルは身に着けるしかない。田舎移住の成功例として自身の経験を緩めの感覚で紹介している。