本の感想「何とかならない時代の幸福論」ブレイディみかこ・鴻上尚史

本の感想「何とかならない時代の幸福論」ブレイディみかこ鴻上尚史朝日新聞出版)

 NHKの「SWITCHインタビュー達人たち」の対談をまとめたもので、さらにこの書籍のために新たな対談を加えて構成したもの。日英の教育の違いがそれぞれの社会のあり様をどう規定しているかを考察している。鴻上氏によるポイントになる言葉は「ランドセルとリクルートスーツが当然と思われている限り日本は変わらないとおもいます。」であり、ブレイディ氏によるポイントになる言葉は「英国は格差はあるんですけど、正直に見せてますよね。日本はないようでいて、ありますよ。でもそれを、ないように見せようとする。」ということ。鴻上氏は高校生の頃に意味のない校則を廃止するために様々な働きかけをした経験がある。校則の問題はequalityでななくsamenessに重きを置く発想から生じていると気付いていて、ランドセルとリクルートスーツがなくならないとだめなのだと説く。私もかつて校則について考えた時に、ランドセルまでは思いつかなかったものの、リクルートスーツのことは思いついていた。これは企業側が学生に明文化したルールとしているものではないにも関わらず、学生の方がいわば自主規制している。だから中学や高校などの意味のない校則だけを責めるわけにはいかない面がある。だからと言って、放置しておいてはならないものであるが。

 おおいに示唆に富む対談であるとともに、話術として双方ともに切れ味がよい。