本の感想「コメンテーター」奥田英朗

本の感想「コメンテーター」奥田英朗文藝春秋

 型破りな精神科医が無茶な治療法で患者を治療する痛快小説。無茶な中にも筋の通ったようなところがあるのが愉快に思える。患者は例えば、視聴率を取ることに取りつかれたテレビ番組の制作者だったり、巨額の資産を稼いだものの自分の身の丈に合った生活を失ったデイトレーダー、閉ざされた空間に拒否反応を示すピアニストなどだ。この精神科医は徹底した「荒療治」で患者に対応する。

 昨今はあらゆる場面でストレスの原因になることがあるもので、メンタル・ヘルスを損なう可能性は誰にでもある。気にしなくていいことを気にしてしまったり、目標を達成することだけに傾注しすぎてしまうようなこともある。ちょっと心の持ち方を変えることができればメンタル・イルネスは解消することもあるのだろう。この痛快小説を読めば、もしかすると精神の不安定を落ち着かせたり、何かに拘り過ぎることを解消したりの一助になるのかもしれない。