本の感想「エヴァーグリーン・ゲーム」石井仁蔵

本の感想「エヴァーグリーン・ゲーム」石井仁蔵(ポプラ社

 チェスプレイヤーが織りなす物語。登場人物は子供の頃に様々なきっかけでチェスに出合った。ある者は難病を患い長期入院中に同年代の患者から習った。ある者は親の期待でピアノのレッスンを受け続けていたがそれに反発した後に偶然のきっかけでチェスと出会った。非行を繰り返し少年院に出たり入ったりしていた若者はある時、暴行を加えた相手の言った言葉がきっかけでチェスと出会った、などなど、きっかけは色々だがこのゲームの魅力に取りつかれた人々がある時は互いに励みあいながら、ある時は相手に反駁しながら、それぞれに生きていく様子を描いている。

 チェスのことを全く知らなくてもストーリーを追っていくことはできるが、多少ともプレイ経験があればより楽しめるのだろうと想像した。知らなかったが、チェスの対戦では「引き分け」になることが少なくないのだという。勝てそうにない局面になると引き分けに持ち込むことも作戦の一つであり、上手く引き分けることができるのは棋力として評価されるのだそうだ。