本の感想「ブラザーズ・ブラジャー」佐原ひかり

本の感想「ブラザーズ・ブラジャー」佐原ひかり(河出書房新社

 父と娘、母と息子という2つの家族が父と母の結婚によって新しく4人の家族となった。父と母の結婚は二人の合意によるものだが、当然のことながら娘と息子が姉弟の関係になったことは両者の意図でも合意でもない。高校生の娘と中学生の弟がひとつ屋根の下で暮らすようになれば何かとぎくしゃくしてしまいそうだ。姉弟はお互いにそれぞれを気遣いながら、さしたる軋轢もなく生活していく。それぞれの生活の中で起きる出来事を織り交ぜながらストーリーが進んでいく。主人公は姉に設定されているが、弟の体験を姉の視点から描くことでストーリーの中核は弟の方にシフトしているように思えた。弟の両親はある事情で離婚しているが、物語の後半で弟は姉を連れて父に会いに行く。その面会で姉弟はより深くお互いを知るきっかけに繋がっていく。若者の成長譚と言ってもいいだろうし、青春小説と言ってもいいのかもしれないが、何かそういったジャンル分けには似つかわしくない作品に思えた。タイトルにあるブラジャーはストーリの小道具として使われていて、こういう使い方もあるのかと思わされた。