本の感想「夜のピクニック」恩田陸

本の感想「夜のピクニック恩田陸(新潮社)

 高校の学校行事で「歩行祭」というものがある。朝、学校を出て延々と長距離を歩き深夜の2時から過眠を取り、朝4時から再スタートして学校へ戻るといういささか無茶な企画だ。毎年秋口に行われるこの行事には全校生徒が参加するが、とりわけ3年生にとってはこれが終われば受験準備のラストスパートに入ることになる。物語は2日間の道中の生徒たちの会話が骨組みになっている。その話題の中心は誰が誰を好きだとか、誰と誰が付き合っているとか、分かれたとかいうことで、随分と退屈だ。読み手がひと昔前の高校生ならこういった内容でも退屈しないのかもしれないが、果たしてどうだろう?何か発展的な方向へと進んでいくのだろうかと思いつつ読み進めたのだが、最後までこの調子だった。作者はよくこれだけの長さの小説をこの一本調子で書き上げたものだと感心した。ストーリーにはひとつ仕掛けがあって、登場人物の2人は異母兄妹or異母姉弟)だということ。父親が共通しており、浮気の結果として婚外子が生まれた。。たまたまその2人は高校3年生で初めて同じクラスになってしまった。そうだからと言ってその2人には何の責任もない。互いに特別な意識をもつことにはならないような気がする。この物語では互いに特別な意識をもっているという設定にしてある。そのあたりにも現実感が乏しかった。