本の感想「凍える島」近藤史恵

本の感想「凍える島」近藤史恵東京創元社)1993_09

 密室殺人のミステリーで単に密室であるだけでなく、この建物は瀬戸内海の孤島にある宿泊施設という設定になっている。外部との遮断のレベルはとても高いといっていいだろう。7~8名の若者たちが貸し切りでこの宿泊施設を数日間利用することになった。そのなかで密室殺人が起こる。さらに不可解な殺人事件が続いて起こる。犯人は残された宿泊者の中にいるのか、何らかの方法で島内に侵入した者がいるのか、あるいは元々島内に潜んでいた何者かがいるのか?様々な推理が浮かぶものの決め手がない。しかし、とうとう犯人が特定された。これで物語が終わりにはならず、この連続殺人の計画をしたのは誰なのかが最後に明かされる。トリックに凝り過ぎるあまりに、登場人物のキャラクター付けが十分でない。そのため誰が誰なのかよく分かり難いし、人物関係がどうなっているのかも説明が弱い。したがって、殺人の動機もなんだかとってつけたような印象があった。そういうところは完成度がいま一つだと感じた。